日本有数の「酒どころ」兵庫県には各地域に酒造組合があり、その土地・蔵元ならではの味わいや香りを守り続けている。その1つが明石市と三木市の蔵元7軒が加盟する明石酒造組合だ。
明石は神戸の灘に対して「西灘」と呼ばれ、古くから酒づくりが盛んな場所。高僧・行基が掘り当てたとされる良質な水に恵まれ、原料には山田錦を始めとする播磨地方の高品質な酒米を使用。そして冬には寒風が吹きつける風土と、良酒に欠かせない環境がすべて整っていた。さらに、但馬や丹波などから熟練の技を持つ杜氏たちが集まったことも明石の酒造りをより発展させていったという。明石酒造組合理事長の米澤仁雄さんは「最盛期には70~100軒もの酒蔵があったと聞いている」と話す。
現在、明石市内で組合に所属しているのは茨木酒造、江井ヶ嶋酒造、大和酒造、西海酒造、明石酒類醸造の5社。これまでは酒に親しみを持ってもらおうと「新酒を楽しむ会」などのイベントを主催してきたが、ここ2年はコロナ禍のため開催を見送っている。そんななかで始めたのが、播磨地域で作られた酒の認証制度を設け、国内外へ売り出そうという新たな取り組みだ。
出発点となったのが、世界的な地理的表示「Geographical Indication」(略して「GI」)。生産方法や気候・風土・土壌といった生産地等の特性が、品質と深く結びついている農林水産物・食品等を特定するもので、認められた産品のみが産地名とともに登録標章(GIマーク)を付けることができる。そこで、明石酒造組合を含む播磨地域の酒造4組合は、兵庫県産山田錦のみを使用し地域内で作られた質の高い日本酒を「GIはりま」として登録申請し、認証を取得した。
「GIはりま」を名乗れるのは、年2回の厳正な審査をクリアした酒のみ。審査項目には酒米や水といった原料だけでなく、口当たりや味・香りなど「はりまの酒らしさ」を確認する詳細な条件があるという。明石酒造組合の各蔵元も「GIはりま」を獲得する酒造りに積極的に取り組むほか、近年は海外にも目を向け、輸出などに力を入れている。
米澤さんが代表取締役を務める明石酒類醸造も、主力商品である「明石鯛 特別純米酒」「明石鯛 純米大吟醸 原酒」が、「GIはりま」に指定された。さらに、昨年は初めての試みとなるクラフトジンを発売。地元愛にあふれ、かつ世界に通じる酒をつくりたいと開発した、その名も「東経135度兵庫ドライジン」だ。
「ジンの本場といえばイギリス。伝統的なロンドンジンに、姫路市安富町産のユズや養父市産の朝倉山椒など5種類のボタニカルを組み合わせた他にはない味わいが特徴。世界に向けて日本のアイデンティティー、そして地元明石をしっかりPRしていきたい」と米澤さん。すでに国内での販売に先駆けて欧米への輸出も行っており、売上は好調だ。
※ラジオ関西『原田伸郎のびのび金ようび』2022年2月25日放送回、「嵐みずえの素敵な明石!!ここ」より
◆明石酒類醸造株式会社
兵庫県明石市大蔵八幡町1-3
電話 078-919-0277
【公式HP】
【明石酒造組合HP】