ゲーム機・玩具大手 任天堂の旧本社ビルを改装した高級ホテル「丸福樓(まるふくろう)」が2022年4月1日に開業。
京都・七条の鍵屋町。街の喧騒から少し離れ、古い町家が立ち並ぶ鴨川と高瀬川の間に現れる、上品なアールデコ調の洋館は、1889(明治22)年に山内房次郎が創業した任天堂の前身、山内任天堂が設立した「丸福株式会社」の社屋。 ホテルの名称もこれにちなんだ。
「男前な洋館やねぇ」。高瀬川の桜をめで、鴨川へ向かう老夫婦がエントランスの前で立ち止まった。
「ママ、”トランプ、たるか”って書いてるよ」。5歳ぐらいの女の子が、外壁に今でも残る創業時のプレート(戦前の右から左への横書き)を見て発した言葉。トランプやかるたの製造場所だったことがうかがえる。
国際観光都市・京都のホテルラッシュはコロナ禍以前から目まぐるしい。だが、丸福樓のコンセプトは、昭和初期のレトロ建築の細やかな施しと、空間そのものを味わう、”ホテル時間”。外出することがはばかれるコロナ禍だからこそ、大きな窓や広いバルコニーで、鴨川からの風を感じ、パノラマサイズの東山三十六峰の緑を眺める、ゆったりした時間を取り戻してほしいとの思いがある。
神戸・旧居留地のオリエンタルホテルや奈良・菊水楼なども運営する「プラン・ドゥ―・シー(東京都千代田区)」がプロデュース。歴史を感じさせる外観や内装をそのまま生かし、建築家の安藤忠雄氏が設計監修した新棟と融合させた。全18室。1泊2人利用の場合は1室10万円(2食付)から。