2015年、兵庫県警機動隊に所属していた男性巡査(当時24歳)が自殺したのは、先輩や上司から受けたパワーハラスメントなどが原因だとして、広島市の両親が兵庫県に約8千万円の損害賠償を求めた訴訟で、パワハラの存在は認めたものの、「自殺との因果関係はない」とした神戸地裁の判決を不服として、両親が控訴した。6月26日付。
死亡した巡査・木戸大地さんは広島市内の高校を卒業後、2009年に兵庫県警に採用された。2012年から機動隊で勤務し、2015年7月ごろにうつ病を発症して同年10月に神戸市内の宿舎で首つり自殺した。 訴状や遺族への取材によると、大地さんは日常的に上司や先輩からの暴言を浴びていたという。具体的には、朝の訓練に参加しなかったとしてスクワットをさせられたり、宴会で裸踊りを強要されたり、「ミス一覧表」の作成を命じられたりもしたとしている。
こうした中、先輩の巡査長から技能試験のカンニングを事実ではないのに認めるよう迫られるようになった。大地さんは宿舎の自室で首をつっているのが見つかり、同年10月15日に亡くなった。
神戸地裁は6月22日の判決で、先輩や上司のパワハラ行為は認め、うつ病の発症も認定した。県には100万円の支払いを命じたが 自殺に至るまでの因果関係は認められないとした。
「カンニング疑惑に関する、大地さんへの先輩隊員の言動は、指導の範囲を超えた不適切なものであり、一定の精神的負荷を与えるものだったが、うつ病を発症したと考えられる時期よりも、相当前の時期だった」とした。
大地さんの父親・一仁さんはラジオ関西の取材に対し、うつ病と自殺についての因果関係がないとした神戸地裁の判決に不信感を抱き「逆に別の原因があったのか、そこが明らかになっていない」と憤る。遺族代理人の市川守弘弁護士は「警察や自衛隊といった組織のパワハラ問題は『判で押したように』因果関係について言及しない。ここに司法のブラックボックス化が垣間見える」と話した。