喫茶店やクラブの名前が書かれた紙製の「ブックマッチ」。1度は目にしたことがあるであろうこのマッチが、2022年6月受注分を最後に日本での生産を終了します。国内生産終了の報せを聞き、ネット上では多くの驚きや悲しみの声が見られました。
最後まで国内ブックマッチの灯りをともし続けたのは、株式会社日東社(兵庫県姫路市)。1973年(昭和48年)から現在までの約49年間にわたり、製造を続けました。製造のきっかけや生産終了の理由について、日東社の小林さんに話を聞きました。
--製造のきっかけを教えてください。
【小林さん】 もともと海外からきたもので、スタイリッシュで斬新な印象があったからだと思います。ほかのマッチ製造会社と同じくらいの時期に製造を開始しました。ちなみに、英語表現では「Matchbook」が主流のようです。
--おもにどのような業種の方が利用されたのでしょうか。
【小林さん】 SNSの写真を見ても、あらゆる業種や企業の方が使用していたと思われます。弊社ですとギフトショップのほかに、消耗品として飲食店やホテル関係への流通が多いように思います。昭和57年(1982年)のピーク時には、1年間に1万1000マッチトン(※1)を生産しました。
--なぜ生産を終了されたのでしょうか。
【小林さん】 需要減です。ブックマッチは広告宣伝(喫茶店や飲食店で無料で配布する)がおもな用途だったため、喫煙人口の減少や電子タバコの普及、受動喫煙防止法により喫煙場所が減ってしまったことが原因で需要が減ったと考えられます。現在では、広告配布物としての役目は名入れライターやポケットティッシュに変化し、さらに、WEBサイトやSNSなどを活用した集客方法の変化も関係していると推測されます。日本燐寸工業会調べによると、令和3年度は25マッチトンにまで落ち込みました。
--ブックマッチの魅力は?
【小林さん】 箱型マッチとの一番の相違点として、カバーの内側にも印刷スペースがあるので広告用に便利だったのではないでしょうか。広告用ポケットティッシュが市場にあふれるまでは、チラシ代わりに、20本×1列のものがその時代ごとの広告としてたいそう使われていたとのこと。また、大手ホテルチェーンやチェーン居酒屋などでは客室用に6本型、10本型などがよく使われていました。箱型マッチと比べると、スタイリッシュで携帯に便利だったとも言われています。