総合印刷大手・凸版印刷株式会社(本社・東京都文京区)は、世界文化遺産・高野山(和歌山県高野町)で新たな事業を展開している。
総本山金剛峯寺(高野山真言宗)の壇上伽藍(だんじょうがらん)を精巧に再現した、VR(Virtual Reality バーチャル・リアリティ/仮想現実)としてのコンテンツ『高野山 壇上伽藍—地上の曼荼羅—』を開発した。
このコンテンツは、2022年8月、高野山の一角にオープンした文化複合施設「高野山デジタルミュージアム」に設けられた特設スペース・VRシアターの大型スクリーン(250インチ)で体感できる。
今回のVR舞台、壇上伽藍は高野山で奥の院御廟と並び、二大聖地とされる。
凸版印刷は、1997年から文化財のデジタルアーカイブのデータを公開する手法として、VR技術を用いた「トッパンVR」の開発に取り組んでいる。唐招提寺(奈良市)や東寺(京都市南区)の立体曼荼羅、マチュピチュ(ペルー・アンデス山脈)などの世界文化遺産、国宝・洛中洛外図屛風(舟木本/東京国立博物館所蔵・監修)といった貴重な文化財をテーマとしたVR作品を数多く制作した。また超高精細表現技術開発として、江戸城天守をクリアで臨場感あふれる映像体験ができる「8KVR」で制作、帝国ホテル旧本館ライト館のVR再現といった取り組みも展開している。
金剛峯寺が所蔵する貴重な文化財についても、デジタルアーカイブに取り組んできた。2007年には重要文化財「両部大曼荼羅(りょうぶだいまんだらず)(通称・血曼荼羅「平清盛奉納」)」の復元再生プロジェクトを立ち上げ、かつての色彩を想定して再現した「想定色平成再生版曼荼羅図(そうていしょく・へいせいさいせいばん・まんだらず)」を2015年7月に金剛峯寺へ奉納している。
コンテンツ開発をめぐっては、凸版印刷が独自に開発した高精細デジタルアーカイブ技術を用いて、壇上伽藍全体の空間をつぶさに残すべく、建造物である根本大塔(こんぽんだいとう)や西塔(さいとう・普段は非公開)の内部で、かつてない規模と範囲の三次元形状計測や高精細デジタル撮影を行った。さらに、金箔や漆、彩色など異なる素材は、独自の記録手法と表現技術を組み合わせ、リアルに再現している。