私たちの食卓に欠かせない野菜や肉などの“農林水産物”。その元には、おいしくて安心・安全なものを届けようと日々努力を続ける生産者がいます。生産コストの高騰により苦境に立たされている兵庫県内各地の生産者を、兵庫五国(摂津・播磨・但馬・丹波・淡路)の直売所や道の駅をめぐって取材する5回シリーズ。第4回は「摂津」です。
三田(さんだ)市の中心、JR三田駅からほど近い場所にある「農協市場館 パスカルさんだ一番館」(以下、パスカルさんだ)。”パスカル”は、パストラル(田園的)とカルチャー(文化)を合わせた造語です。南部にはニュータウンの都市空間が広がり、北部は豊かな自然に恵まれた三田市。名前には、「田園文化都市 三田」の拠点を目指したいという思いが込められています。
「パスカルさんだ」では、人間の体は自然の一部であり、生活するその土、水、風土で栽培された作物が身体のために一番よいとする『身土不二(しんどふじ)』の考え方を大切にしています。そのため、扱う商品の約9割が三田市産です。店内には、「三田うど」や山の芋、丹波黒大豆枝豆など野菜をはじめ、きめ細かく濃赤の肉質とあっさりとした脂肪が特徴の「三田肉」、粘りやつや、香りに優れた「三田米」などが並びます。
冬の時期に旬を迎えるのが、特産の太ネギ「極ぶとくん」。通常のネギ2~3本分もの太さがあるそう! 白い部分だけではなく青い部分も丸ごと食べることができる、甘みの強いネギです。
「地元の新鮮な野菜を食べてほしい」と呼びかけるのは、三田市で10年以上農業を続ける「おがや農場」の尾栢稔さんです。
冬の最低気温がマイナス10度前後になる三田で、キャベツや大根など旬の野菜を露地栽培するほか、ミニトマトをハウス栽培しています。「冬のトマトはゆっくり赤くなるから甘みが凝縮されている」と話す姿からは、常においしい野菜を消費者に届けたいという思いが感じられます。