物価高が続く昨今。8月には牛乳・乳製品の値上げが予定されています。昨年11月に見直したものの、輸入飼料価格の急騰などにより苦境が続くため再度引き上げるとのこと。廃業する酪農家も増加しています。
そのような状況にあって、新鮮な国産牛乳を提供するための策を講じ、向かい風の中を前進する牧場があります。兵庫県内の2つの牧場で話を聞きました。
◆丸尾牧場(兵庫県赤穂市)
丸尾牧場は、1956(昭和31)年、現在の牧場主の丸尾建城さんの父が、搾乳牛1頭から牛飼いをスタート。徐々に頭数を増やしながら規模を拡大してきました。
現在、赤穂市高野にある第一牧場では、約120頭の成牛を飼育し搾乳を行っています。今年2月には、赤穂市西有年に第二牧場が完成。現在牛を増やしているといい、今後、搾乳牛500頭、乾乳牛(次の分娩に向けて搾乳を止めている牛)100頭や子牛も育てていく予定としています。
第二牧場では、新たに搾乳ロボットを導入しました。人の手をいっさいかけることなく搾乳できるため、そのぶん牛の管理に注意を払うようにしているといいます。また、搾乳ロボットは、全自動搾乳だけでなく乳牛の体調管理もできます。きれいなミルクを自動で仕分けられることから、作業効率が格段に上がったそうです。
しかし、エサ価格の高騰によりやめていく酪農家が多い中、牧場をそれまでの5倍もの大きさにするのはかなりのチャレンジだったはず……。
じつは、搾乳ロボットを導入して牧場を大きくしたいと考えたのは、第二牧場完成のタイミングで社長業を引き継いだ丸尾さんの息子だそう。丸尾さんは、「数年前まで、搾乳ロボットを導入することには反対の気持ちが大きかったんです。しかし、牧場を大きくすることが息子の夢で、やりたいという意志が強く、私はできる限りその夢の手助けをしたいと思いました。一度しかない人生ですから、後ろを見ずに突き進むしかない! そんな気持ちです」(丸尾さん)
現在の目標は、搾乳牛500頭を飼育し、1日15トン(牛乳パック換算で約1万5000本分)のミルクを搾乳し出荷することだといいます。
「このままではあかん! と思うんです。踏ん張って『今が一番悪い、この先明るい未来しかない』と頑張るしかないと思っています。現在第二牧場は、息子以外、従業員はみんな未経験者なんです。酪農に興味のある人が全国から集まってきて頑張ってくれている。うちから酪農家が育って、未来の酪農業界を支えていってほしい」(丸尾さん)