江戸時代中期に京都を中心に活躍、その独創的な着想で「奇想の画家」と呼ばれる長沢芦雪(ながさわ・ろせつ/1754~1799年)の画業を紹介する展覧会「特別展 生誕270年 長沢芦雪―奇想の旅、天才絵師の全貌―」が大阪中之島美術館(大阪市北区)で開かれている。12月3日(日)まで。
芦雪は、丹波国篠山(現在の兵庫県篠山市)の藩士の子として生まれ、京都画壇の重鎮で写生画の祖、円山応挙(1733~95年)に入門。師に学びつつ、ユニークなセンス、大胆な構図、卓越した描写力、さらには人を楽しませようとするサービス精神までも備え、独自のアートを展開していった。
本展では、芦雪が得意とした大画面の障壁画(襖絵)をはじめとする代表作、新たに見つかった初公開作品11点、重要文化財4点を含む選りすぐりの名品約100点(点数はいずれも前後期合計)を公開。芦雪ならではのユーモラスでかわいらしい動物画もあり、幅広い年代層が楽しめる展示となっている。
大きな見どころは、大乗寺(兵庫)、無量寺(和歌山)、高山寺(同)、薬師寺(奈良)、西光寺(島根)の襖に残る名画8作。中でもインパクトがあるのは、33歳の時に手掛けた無量寺の「龍図襖」「虎図襖」(いずれも重文/前期展示)だ。巨大な3本の爪を突き出し、鋭い眼差しととがった歯で見る者を威圧する龍と、ネコを思わせる表情で、今にも飛び出して来るような躍動感溢れるトラが隣同士、一直線に並ぶ。
一方、大乗寺所蔵の「群猿図」(重文/後期)は、表情豊かなサルを描き、群れの様子を温かく表現。動物に対する芦雪のこまやかな観察眼と慈愛が見て取れる。