日本の米・フランスのパン・メキシコのトルティーヤなど国によって「主食」は異なり、主食からその国の気候や土壌などさまざまな事情が読み取れることも。今回注目したのは、西アフリカにある熱帯気候の国・ガーナ。在ガーナ共和国・日本国大使館の公邸料理人料理長をつとめたのち、現在は兵庫県の姫路市でレストラン「ビストロゼブラ」を営む奥見武久さんに話を聞きました。
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ガーナの食において特徴的なのは「主食」の種類が多いこと。代表的なものだけでも、ヤム芋・トウモロコシ・米・プランテン(バナナ)・キャッサバ芋などが挙げられます。食事メニューの組み合わせとしては“主食1種類とシチュー”が主流なのだとか。米を使った主食メニューとしてポピュラーなのが、スパイスとトマトで炊いた「ジョロフライス」。ピラフのようなもので、ガーナの家庭で親しまれているほか店でも食べることができるそうです。日本でほぼ見ることがないのはヤム芋やキャッサバ芋、親しみはあるが主食の感覚は薄いトウモロコシ.....これらはどう主食になりえるのでしょうか?
「ヤム芋をそのまま蒸かしたり、トウモロコシの粉を発酵させて『バンクー』や『ケンケ』を作ったり、キャッサバの粉で『フフ』を作ったりします。見た目はいずれも日本のお餅に似ています。主食の数が多い理由としては、それらの穀物や芋類が育ちやすい土壌だからということが考えられます」(奥見さん)
さて、ガーナの食卓では洗剤とプラスチック製洗面器がデフォルトでセットされています。これは食事をする際に「基本的に右手を使って料理を食べる」という習慣が根付いているため。そのため、洗面器をフィンガーボウルとして使い洗剤で指を洗うのです。
「手で食べる理由については、はっきりしていません。そもそもカトラリーを使う歴史は、西洋・東洋問わずそこまで古くありません。今でこそ当たり前のようにカトラリーを使って食事をしていますが、当時はいちいちカトラリーを洗うより手をしっかり洗って食べる方が、衛生管理の面で合理的だった可能性があります」(奥見さん)
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食卓で、わざわざ洗剤を使って手を洗う理由を聞いてみたところ「パームオイル」が関係しているのでは.....と奥見さん。パームオイルとはアブラヤシという植物の果実からとれる油のことで、ガーナでは煮込みや料理の仕上げなど多用します。奥見さんによると、パームオイルは結構ギトギトしているそうで、水だけのすすぎでは物足らないのかもしれないとのことでした。
(取材・文=つちだ四郎)
◆ビストロゼブラ
住所
670-0921
兵庫県姫路市綿町63藤野ビル1F
定休日:水曜日
電話番号:079-282-4040
公式サイト