旧優生保護法(1948~1996年)のもとで、障がい者らが不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして、全国の被害者らが国に損害賠償を求めた5件の訴訟で、最高裁は3日、この法律を憲法違反として国の賠償責任を認めた。
二審で原告が勝訴した4件で国の上告を棄却し、判決が確定した。原告の請求を棄却した仙台高裁判決については破棄し、審理を差し戻した。裁判官15人の意見が全員一致した。最高裁が法律の規定を違憲としたのは戦後13例目。
最高裁は障がいがある人に対し、差別的な不利益をもたらした国の責任を「極めて重大」と認定した。さらに1996(平成8)年の母体保護法への改正や、一時金320万円を支給する2019(令和元)年成立の救済法についても対応不十分とした。
この問題をめぐっては、2018年以降、被害者ら39人が全国12地裁と支部に提訴。
3日の判決は神戸、大阪、札幌、仙台、東京の各地裁の訴訟。原告らは1950〜70年代、強制不妊手術を受けた。
不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」が最大の争点だったが、最高裁は、戦後最大の人権侵害とされる旧優生保護法について、この“時の壁”を適用せず、「著しく正義・公平の理念に反する場合は適用されない」とした。
最高裁は1989(平成元)年、不法行為から20年が経過すると、損害賠償請求権が自動的に消滅するとの解釈を示していたが、これを覆した。
このうち、2019年2月に神戸地裁に国家賠償請求訴訟を起こした神戸市の女性(68)は、12歳だった1968(昭和43)年、理由も知らされずに家族に病院に連れて行かれ、手術を受けたという。この女性を含む男女5人(うち2人死亡)が国家賠償を求めて起こした訴訟(兵庫訴訟)で、2021年8月の一審・神戸地裁判決は、旧優生保護法を違憲とした上で女性らの請求を棄却したが、昨年(2023年)3月の二審・大阪高裁判決は国に賠償を命じた。国側はこれを不服とし、最高裁に上告していた。
◆岸田首相「真摯に反省、心から深くおわび」