産物や製品の標準を定めた「規格」。ここから外れた、いわゆる“規格外”の品を消費者に届けようとする取り組みが世の中で広がっている。そのようななか兵庫県神戸市に、新鮮な野菜の販売に加えて規格外の野菜で作ったメニューを提供する店がある。店主の「農家と食卓をつなぎたい」との思いから生まれた“八百屋+ピザスタンド”だ。
神戸市北区にある「お野菜キッチンおひさま」は、オーナー・竹尾理歩さんの母が育てたこだわりの野菜を中心に販売している。さらに、規格外の野菜を使った総菜やピザを提供している。今年の8月4日で1周年を迎えた。
竹尾さんは父が工務店を経営、母は丹波市で農業に従事するという環境で育った。父の影響を受けて、いつかは自営業に挑戦してみたいと思っていたという。そんなときに母から「野菜を売るところはないかな」と相談を受けたことがきっかけで、自営の店を本格的に考えるようになったという。
その後、京都府福知山市のレストランで修業を積み、自らの店を開いた竹尾さん。野菜を売るだけではなく総菜やピザを提供することにした背景には、竹尾さんの強い思いがあった。
「農家さんにとって、農協などに買い取ってもらえるのはキズ・汚れなどがないA品と呼ばれるもののみ。“少しキズがあるもののおいしく食べられる野菜”が食卓に届かないのはもったいない。私が(農家と食卓を)つなげるような役目を果たせたらと思っています」(竹尾さん)
中でもピザを選んだ理由は、「“お野菜キッチン”という名前がついているので、お野菜を皆様に食べていただきたくて。その手段の一つとして、私たちから提供できるものがないかと考えて思いついたのが、どの世代も大好きなピザでした」とのこと。実は竹尾さんには、大学生のときに野菜を扱うレストランでピザを焼いていた経験がある。
ピザは、薪を使って焼くと、焼き上がったときの香りが全然違うのだそう。「実際、ピザを食べたお客様に『薪(窯)で焼いたのがすごくよく伝わる』という風に言っていただきます」と竹尾さんは笑った。