いつでも誰にでも、どの年齢からでも起こりうる「ひきこもり」。社会生活の中で感じざるを得ない“孤独・孤立”状態の一つとされ、その数は今や全国で146万人に上ると言われるほどです。
ひきこもり当事者やその家族を孤立させないためには何が必要なのかを共に考えようと、このほどひきこもり経験者の生の声を届ける座談会が実施され、11月末までYouTube動画として限定公開されています。
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座談会を実施したのは神戸市が開設するひきこもり専門相談窓口、神戸ひきこもり支援室です。座談会には、同支援室の利用経験がある、トシさん(40代男性)、ヨネさん(30代男性)、サトウさん(30代男性)の3人が参加しました。
ーーー神戸ひきこもり支援室との出会いは?
【トシさん】 4年ほど前に、支援室に相談に行っていた両親から声をかけられたことがきっかけでした。「このままだと社会との接点がまったくない」と思っていたこともあり、悪いことをしたわけではないけれど、半分諦め、半分義務のような気持ちで「行かなければいけない」と自ら判断して行きました。
【ヨネさん】 母が支援室に通っていて、相談員の方が会いたいと言ってくれていると聞いていたのですが3回ほど断りました。私は、退職後約3年ひきこもり状態に。働ける気が全然せず家族に申し訳ないと思っていました。昼まで寝て、散歩や料理をし、夜中3~4時頃までネットやYouTubeを観る生活。3年ほど経ち、母がずっと支援室に行っていることに申し訳なさを感じ、一回行けば(母が)やめるかもしれない……という気持ちでした。
【サトウさん】 両親とは定期連絡を取って、他愛ない話をしていました。その中で母が、意を決したように支援室を紹介してくれたんです。そのときに「いつもこんなに助けてくれている人を、こんなに苦しめていたのか」と強いショックを受け、そのショックが消えないうちにすぐ支援室に電話して、行くことを決めました。
ーーー初めて支援室に行ったときの印象は?
【トシさん】 相談員さんから「好きなことを話していいよ」と言われ、普段から思っていることをひたすら話しました。どこにも居場所がないと感じていたところに、“スペース”を作ってもらった印象がありました。
【ヨネさん】 相談員の方に「ありがとう。よく来てくれました」と言われ、「責められる場所じゃないんだな」と思えたので、その後も通うことができました。「いまは全然働ける気がしない」という思いも認めてくれたので、何でも話せると感じました。
【サトウさん】 いままでずっと溜め込んでいたものを聞いてもらえて安心感がありました。ただただ聞いた話に対して共感してくださって、支援室に行くまでにあった緊張はなくなりました。
ーーー当事者が集まって話す「当事者会」について
【トシさん】 (参加者に)お会いして、「つらいと思っているのは自分だけではない」と実感できたのがとても良かったです。(当事者会は、周りが)同じような経験をされた人だからではあるものの、(見知らぬ人と会うのに)身構えなくなりました。ヨネさんが、レザークラフトで自作したバッグを出されて「こんな人もいるんだ。スゴイ!」と刺激を受けました。
【ヨネさん】 話ができるかすごく不安だったため、話のきっかけにと(趣味のレザークラフトで作った)カバンを持って行きました。会が終わった後も集まって話せたのが楽しかったので、通いたいと思いました。ひきこもりであることを隠す必要がない点が(他の場とは)全然違うと思いました《トシさん大きくうなずき》。
【サトウさん】 自分が“特別ではない”印象が強かった。個人面談で趣味の話を聞いてもらえたことで、希望があると思えたのがうれしかったです。趣味は筆記具。ひきこもり中に家族にさえ話せないことをノートに殴り書きし、吐き出すことを習慣化させた中で興味が湧きました。
このほかにも座談会では、いかに安堵を得たか、前向きになったかなど、当事者会を通じた変化についても語られました。