2024年12月5日(日本時間・現地時間では12月4日)、ユネスコ無形文化遺産に「日本の伝統的酒造り」が登録されました。麹菌を使用した日本の伝統的な発酵文化が認められたともいえる嬉しいニュースに、「麹菌を使った酒造りというのは播州(※)と非常に縁が深いんです」と話すのは、老舗酒蔵「株式会社本田商店」(兵庫県姫路市)の取締役会長・本田眞一郎さん。同社は「龍力」の代表銘柄で知られています。今回、姫路市の魅力を発信するラジオ番組で詳しい話を聞きました。
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※播州とは.....姫路市を中心として東は神戸市に隣接する明石市・三木市、西は赤穂市やたつの市までのエリアを指す。
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日本酒造りの起源は紀元前200~300年頃まで遡るとされていますが、麹菌を使用した酒造りが文献に明確に記録されている最古の例は713年に編纂された「播磨風土記」に見られるのだとか。「そうした理由もあり、播磨は日本酒のふるさととも呼ばれているのです」と本田さん。続けて「酒造りには麹が重要」と話し、麹の材料となる米へのこだわりも語りました。酒米の王様とも呼ばれる酒造好適米「山田錦」。兵庫県では2024年時点で全国の約6割を生産しているそう。
毎年開催されている「全国新酒鑑評会」では、この山田錦を使用した酒が上位を占めているといい、2024年6月に開かれたこの会では、地元産の山田錦を使用した播州地方の4銘柄が金賞を獲得したといいます。
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「播州の酒は鑑評会でも金賞常連なんです。ですが地元の方々にとってはあまりに身近な存在であることや、謙虚な地域性もあって、その凄さを大きくとらえられていないような気がします。地元でこんなに素晴らしいものを作っているんだという意識をもっていただけるように、これから発信力を高めていかなければと感じています」(本田さん)
番組パーソナリティの清元秀泰姫路市長は「日本酒造りにおける、伝統文化の知識と経験の蓄積が素晴らしい。また、麹菌は生きていて、姫路の酒蔵内で共存している。その歴史ある麹菌を大切に保存し次世代に受け継いでいくことは、極めて重要なことだと考えています」と述べました。
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古くから「熱燗で飲む」のが主流だった日本酒ですが、1921年から続く株式会社本田商店の長い歴史の中で、大きなポイントとなったことがあります。それは「“冷やして、グラスで飲む”という提案」を同社が発信したことだったと本田さんは振り返ります。これまでの概念を覆す革新的な飲み方はいまや広く浸透し、高級な大吟醸にも取り入れられています。
さらに本田さんは「今では同社の主力商品である『米のささやき』をリリースした際、ひらがなで書かれたの瓶ラベルに対して社内で否定的な意見が多かったんですよ」と、意外なエピソードも語りました。
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チャレンジ精神で絶えず新たな挑戦を追求してきた株式会社本田商店。今後の発展にますます期待が寄せられています。
(取材・文 洲崎春花)
※ラジオ関西『ヒメトピ558(ゴーゴーエイト)』2025年1月31日、2月7日、14日放送回より