ここ数年、飲食業界のトレンドワードとして耳にすることが増えた「クラフト○○」。コーラやジンジャーエール、チョコレートなど、多様なジャンルで「クラフト」の波が広がっています。その中でも、特に注目を集めているのが「クラフトビール」です。
クラフトビールならではの魅力とはいったい何なのでしょうか? 神戸・湊川でクラフトビールの専門店を営む店主に、その奥深い世界について聞きました。
クラフトビールの特徴は、その多様性にあると話すのは、神戸市兵庫区湊川町のクラフトビールショップ「TRIANGLE(トライアングル)」店主・前村芳秋さんです。

小規模なブルワリー(製造所)がこだわりを持って作るからこそ、個性的な味わいが生まれるという、クラフトビール。その土地ならではの特産品を使ったものも多く、果物・牡蠣・牛乳など多様。聞けば聞くほど興味をそそられます。春は桜の葉を使用した商品も登場するといい、季節ごとの旬を楽しんだり、新しい味との出会いがあったりするのも魅力の一つだそうです。
味わいも実に幅広く、伝統的なスタイルのものから、フルーティーで爽やかな飲みやすいものまで、さまざま。「ビールは苦いから苦手……」という人でも、自分好みの一本が見つかる可能性が高いのがクラフトビールの面白いところなのだとか。
現在、兵庫県には約30のブルワリーがあり、それぞれが個性豊かなビールを生み出しています。取材時に同店のタップリスト(その日のお品書き)に並んでいたのは、兵庫県・丹波篠山のブルワリーが醸造した、マヌカハニーを使用している「マヌカハニーNZエール」。
「えっ、ビールにハチミツ!?」と驚いた筆者ですが、実際に飲んでみると、ハチミツの甘さが前面に出るわけではなく、コクやまろやかさが加わったような印象。まるで料理の隠し味のようにビールの味わいに深みを与えています。

「クラフトビール専門店はまだまだ少なく、気になっているけど一歩踏み出せない人も多いと思います」と前村さん。確かに、大型スーパーのリカーコーナーなどでもクラフトビールを見かけるようになりましたが、価格が少し高めなこともあり、気軽に試しにくいと感じる人もいるかもしれません。
「だからこそ、まずは知ってもらい、選択肢に加えてもらうことが大事」と、前村さん。その思いから、同店では量り売りの他、飲み比べセットも用意。気軽にクラフトビールの世界を体験できる工夫を凝らしています。
