「娘のアトピー」で始めたことが「次世代へ繋ぎたい仕事」に “地域の未来”創る農業家の取り組みとは | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「娘のアトピー」で始めたことが「次世代へ繋ぎたい仕事」に “地域の未来”創る農業家の取り組みとは

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 全国的にコメ不足や価格高騰が話題になる中、農家の高齢化や担い手不足が課題として浮き彫りになっています。兵庫県姫路市の夢前町でも同じ状況に直面しており、その中で新しい形の農業を模索しているそう。有限会社夢前夢工房代表の衣笠愛之さんに話を聞きました。

写真中央:有限会社夢前夢工房 代表の衣笠愛之さん 左:パーソナリティの清元秀泰姫路市長 右:ナビゲーターの洲崎春花
写真中央:有限会社夢前夢工房 代表の衣笠愛之さん 左:パーソナリティの清元秀泰姫路市長 右:ナビゲーターの洲崎春花

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「農業に関心を持つようになったきっかけは、娘のアトピー」と話す衣笠さん。医師の助言を受け、農薬や化学肥料を使わずに米や野菜を育て始めたところ、家族や知人から「おいしい」と喜ばれたといいます。そうした経験を通じて農業に取り組む意欲が高まり、地域で耕作放棄されかけていた田畑を引き受けたそう。

 現在、衣笠さんは次世代に農業を残す仕組みづくりに力を注いでいます。ICTを導入し、スマートフォンで水管理や生育状況を把握できる体制を整備。衛星データを活用して肥料の量を調整するなど、大規模で効率的な営農を進めています。兵庫県内で先行的に行われた大区画の水田整備にも携わっており、関心を持つ農業関係者の視察も受け入れています。

自動操舵システムの画面 提供:有限会社夢前夢工房
自動操舵システムの画面 提供:有限会社夢前夢工房

 また「農業の重労働を減らすための試み」として地元企業と協力し、鉄鋼スラグを活用した土地改良の実証実験を実施。雑草が生えにくくなり電気柵としても機能することから、獣害対策への効果も確認されつつあります。こうした取り組みは、農業を持続可能にするための一つの方法といえそうです。

 一方で、観光との結びつけにも力を入れています。夢工房が運営する施設では、そば打ちやバーベキュー・川遊びなどを通じて、自然の中で農や食を体験できる場を提供しています。そこで提供される料理には旬の地元野菜が使われ、メニューはスタッフが考案するオリジナルなのだとか。

 さらに「姫路わさび」のハウス栽培・生産にも挑戦中。通常は数年かかる栽培を1年で行う方法を試しており、地域の新しい特産品になればと奮闘しています。「収益性のある作物を開発することで、若い世代が農業に参入しやすくしたい。ただし、安定した収量や販路の確立には今後の検証も必要です」と衣笠さんは話しました。

姫路わさび栽培の様子 提供:有限会社夢前夢工房
姫路わさび栽培の様子 提供:有限会社夢前夢工房

「農業は大変というイメージがあるが、本当は喜びを与えられるやりがいのある仕事」と衣笠さん。地域の課題に取り組みながら、農業を持続可能にする仕組みを模索する姿勢は、これからの農業の在り方を考えるうえで参考となりそうです。

(取材・文=洲崎春花)

※ラジオ関西「ヒメトピ558」2025年9月5日、12日放送分より

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