世界遺産・姫路城の城下町のにぎわいを支えてきた商店街は、いま目まぐるしく変化しています。時代とともに新しいものが流入し、それらを柔軟に受け入れつつある中で、昔ながらの文化を伝承すべく開発された“超個性派スイーツ”の存在を聞きつけた筆者。創業78年の歴史を持つ株式会社大陸(兵庫県姫路市)の代表取締役・岡本一さんに話を聞きました。
☆☆☆☆
同社の創業は戦後間もない1947年。「初代が満州から引き揚げて、焼け野原の姫路に『茶房大陸』を開店したのが始まりだった」と岡本さん。時代の流れとともに同社は洋菓子の製造・販売へ事業を拡大。数々のスイーツを生み出してきた中で、“ハンパない個性”を放つケーキが爆誕したのです。
その名も「姫路おでんケーキ」。こんにゃく・たまご・竹輪というお馴染みの“おでんダネ”に見立てた3種類のケーキは、地元産の古代米などをはじめ姫路ならではの食材を生かしているそう。それらが串に刺さった様は、もはやおでんの佇まいそのもの。
開発した理由について岡本さんは、「姫路の食文化をもっと多くの人に知ってもらいたいと思ったんです。姫路ではおでんに生姜醤油をつけて食べるのがスタンダード。その独自性をケーキで表現できないかと考えました」と明かしました。

自社の経営だけでなく、銀の馬車道ネットワーク協議会の運営にも携わっている岡本さん。そのむかし飾磨港(現在の姫路港)と生野鉱山を結んでいた日本初の高速産業道路で、日本遺産の「銀の馬車道沿線」にまつわるスイーツづくりにも力を注ぎます。例えば、沿線付近の特産品で白い皮が特徴の「銀馬車かぼちゃ」を使ったマドレーヌには、“かつて鉱石を運んだ道”としての歴史を重ねているといいます。

「創業当時、茶房は地域の社交場的な存在だったようで見合いや会合で利用されていました。ネルドリップで丁寧に淹れるコーヒーや手づくりのケーキを囲んで語り合う時間は、人々にとって特別なひとときだったのでしょう」と岡本さんは振り返ります。続けて「これからも昔ながらの文化を守りながら地域の魅力を伝えていければ」と語り、取材を締めくくりました。

(取材・文=洲崎春花)
※ラジオ関西「ヒメトピ558」2025年10月17日、24日放送分より





