《2》震災報道の検証 【5】地域と震災報道
【5】地域と震災報道
・今回の震災に際して行政の救援対策の立ち遅れと不備、的確な広報体制の遅れが指摘されているなかで地元ラジオ局としてAM神戸が地域に果たした役割は大きい。
地震発生後の停電と長時間の電話の不通、発着信規制下で、直後から被災地へ向けての救命・救援放送をCM、全番組をカットして連続69時間続け、被災地域の人々のよりどころとなった。
・具体的には
ホットラインに寄せられた安否情報をはじめ、災害地域の人々の細かな救援を求める個人情報を電波にのせた。
多くの人々が消息不明の肉親・知人の安否を知りたいという、一番強いニーズに答えた。
・行政の立ち遅れのなかで、個人情報の中継基地の役割を果たし、地域ぐるみの救援ネットワーク体制を作った。
本来、行政が行うべき情報提供の役割と相談窓口の役割を担ったと言える。
・ラジオカーなどの積極取材によって、被災地域の現況を地元ならではの克明さと被災者の心情に合った形で明らかにするとともに、地域の人々の要望、声を代弁し問題提起した。
それによって、具体的な救援を地域はもちろん、行政、ボランティア、近隣地区へ要請し、救援活動につないでいった。
・放送を通じて一貫して被災者と同じ目線を保ち、被災者と気持ちを共有する放送局というイメージを作り上げた。
自らも被災局であるということが地域の信頼を得、被災者と被災者、市民と市民、リスナーとリスナーを結ぶ救援ネットワークを形成する市民ラジオとしての役割を果たす結果となった。
・安否情報をはじめ、ラジオカーのリポートなど、放送にたずさわる全員の気持ちが、『被災者を救い、不安を解消したい』という思いで一致していった。 興奮せず、必要なことをキチンと伝えることによって、不安をあおることなく、安心報道という基本を自然に作り上げた。
・69時間を全うした以後、各番組では震災中心の報道や2月半ばから新番組『震災情報ステーション』をスタートさせ、震災フォローを行った。
しかし、レギュラーの復活もあり、人員不足から取材面での縮小を余儀なくされた。
結果、取材範囲が狭くなり地域のニーズ、期待には必ずしも答えられなかった。
直後の放送で地域の人々の期待に答え、信頼を得ただけに、その後のフォローの面で、取材力の限界とはいえ、物量に優る在阪局などに差をつけられたのは残念である。
・国際都市神戸という視点から見れば、外国人向けの情報提供はほとんどできず、KISS FMにその役を譲ることになった。
・また高齢者や身体障害者などへのフォローは十分でなかった。
・被災地の住民に対する情報に地域格差が生じた。 これは、取材陣の少なさ、情報量の濃淡などが原因である。
- 《2》震災報道の検証 【6】メディアとしての視点
- 《2》震災報道の検証 【5】地域と震災報道
- 《2》震災報道の検証 【4-B】放送内容・情報の総括