旧優生保護法(1948~1996年)のもとで不妊手術を強制されたのは憲法違反だとする一連の訴訟で、 大阪地裁が11月30日、 旧優生保護法は憲法に違反するとする一方、賠償請求については手術から提訴まで20年の「除斥期間」が経過し消滅したとして棄却した。
一連の訴訟は神戸、大阪、東京、仙台など全国9地裁・支部で起こされ、 2019年5月の仙台地裁、2020年6月の東京地裁で判決が出ており、大阪地裁判決は3件目。いずれも原告側の請求が棄却された。 旧優生保護法の違憲性を認めたのは、仙台地裁判決に続き大阪地裁が2例目となる。東京地裁は賠償請求についてのみ棄却、違憲性には触れていない。
■兵庫の原告ら「傷は消えても、苦しみは続く」悔しさにじませ
兵庫では男女5人が国に計5500万円の損害賠償を求めている。 5人は幼少期からの過酷な差別体験を語り、被告の国へ「障害者だからという理由でなぜ人間としての権利を奪われなければいけないのか」と訴えているが、このうち、がんの闘病を続けていた1人の男性(81)が11月17日に死去した。男性は妻(80)とともに2018年9月、聴覚障害者として初めて提訴していた。 原告の1人、脳性まひで手足が不自由な神戸市の女性(65)は「時間が経っていても、身体の傷が消えたとしても、私達が受けた苦しみは消えずに続いている。時間が経過しているから(賠償)請求が認められないとの判決が続いていることを非常に残念に思う」と悔しさをにじませた。
また弁護団は「違憲という判断を行ったとはいえ、請求を棄却したことは、差別と苦痛に耐え、裁判に立ち上がった障害者を打ちのめすものである。裁判所が国会、政府の責任を認めないことは、司法もまた、優生保護法・優生思想を追認することに他ならない。この判決を認めることはできない」とコメントした。
■兵庫訴訟、大詰め 2021年に結審、判決へ
国の統計では全国で約2万5千人が不妊手術を受けたとされている。兵庫の原告らは、国が旧優生保護法で「不良な子孫の出生の防止」を目的として進めるなか兵庫県が展開した「不幸な子どもの生まれない県民運動」(1966~1974年)などにつながったと指摘している。弁護団によると当時、政府は各自治体に優生政策を競わせていた側面もあったのではないかと指摘している。