「独特のポーズなので、初めてご覧になった方は一体何者なのかと思われるでしょう。学芸員としての見地でお答えすると、仏教には如来、菩薩、明王などさまざまな仏が存在しますが、なかには恐ろしい、怖い姿をした代表的なものとして不動明王(大日如来の化身とされる)がありますよね。あえてそうした恐ろしい姿で教えを導くという側面があると思います。ただ元三大師の目がくりっとしていたり、口元が笑っているように見えるのは、観音の化身とされているからで、慈悲の心を表現しているのかもしれません」
「最澄が比叡山を開創して延暦寺の礎を築きますが、その約180年後に現れた元三大師・良源のころには延暦寺が衰退、山内の風紀も乱れて立て直しを図ります。もともと僧としての能力が高いから摂政・関白をつかさどる藤原家から一目置かれ、当時の政治ともうまく付き合いながら諸堂の再建のため資金援助のバックボーンを作ったのが功を奏し、比叡山をかつてないほどに発展させたところが、経営者の心に響くのだと思います。時代の流れを読んで政治と結びついた大きな決断力。これこそが功績でしょうね」
福井さんは2020年6月、元三大師の生涯とその信仰について記した本「疫神病除(えきしんやまいよけ)の護符に描かれた 元三大師良源」を出版した。(サンライズ出版・32ページ 税込み990円)。すでに増刷も決まっているという。
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元三大師・良源を祀る寺院は各地に