獅子舞と“ステッカー”がつないだ地元意識 「ヒョーゴスラビア」における県境とは (3)但馬

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 日本列島、本州を陸路で縦走しようとすると、必ず通らなければならない県が1つだけある。それが兵庫県だ。

 兵庫県はかつて、摂津・丹波・但馬・播磨・淡路の旧五国から構成され、多くの文化が入り混じっていた。それは現在にも受け継がれている。2010年代に登場した「ヒョーゴスラビア」という表現は、かつてヨーロッパにあった多くの文化が混ざり合った国「ユーゴスラビア」になぞらえたものだ。

 2020年からのコロナ禍で、日本では「都道府県をまたいだ移動の自粛」が求められた。県境に付近に住む人はどのように感じたのか。兵庫県「ヒョーゴスラビア」の旧五国ごとに県境付近を訪ねた。第3回は、「但馬」。

<その3>但馬

 日本海の良港であり、江戸時代には北前船の「風待ち・潮待ち」港として栄えた但馬。但馬国は西は新温泉町が鳥取県、東は豊岡市が京都府と接している。西は、標高1510メートルの氷ノ山の山頂あたりが県境になっていて、北へ行くと湯村温泉、カニで有名な浜坂漁港がある。

 ここには「目に見える県境」が存在する。この地域は冬になると、積雪となる。「普段は意識しないが、強いていうと冬。除雪の仕方が違うので、県境へ行くとパッと変わる。除雪は県境をまたがないので」と話すのは新温泉町の女性。雪の残り方が違うのだという。なるほど。除雪作業は「県ごと」に行われ、自治体によってもやり方が違う。

 県境を越えて目にするのが「麒麟のまち」というステッカーだ。「新温泉町の生活圏はもともと鳥取。麒麟獅子舞という伝統文化が残っている地域で連携した」という。

 鳥取県の鳥取市、岩美町、若桜町、智頭町、八頭町、兵庫県の香美町と新温泉町で「麒麟のまち」という広域連携を立ち上げた。因幡と但馬にまたがるこの地域は、古くから歴史や文化、生活圏を共有し、山陰ジオパークと中国山地でつながれている。「行き来は普通にあるので、新温泉の人が鳥取へ、鳥取の人が新温泉へ買い物にということもある。境という意識はない」と話す人も。県境を越えた移動の自粛が呼び掛けられた時期も、例えばステッカーを車に貼ることによって、ナンバーに関係なく「地元ですよ」アピールになった。

麒麟のまちステッカー
麒麟のまちステッカー

 地元意識を高めるきっかけとなった麒麟獅子舞。麒麟は中国の想像上の動物で、他の生き物を傷つけない泰平の世の象徴とされた霊獣。この麒麟に扮して舞うと邪気を払い幸福をもたらすとして、但馬・鳥取の因幡地域の伝統芸能として伝わっている。日本遺産にも選ばれ、新たな取り組みにも期待がかかる。

 ところで、県境に位置する「氷ノ山」は「ひょうのせん」と読む。「兵庫・神戸のヒストリアン」として活躍する歴史家の田辺眞人・園田学園女子大学名誉教授は「鳥取にはかつて『山』を『せん』と読む地域があった。氷ノ山の他にも扇ノ山、大山、蒜山などは“せん”と読む。岡山北部から鳥取、兵庫の北西部にかけての1つの文化圏と言える。こういった文化の広がりの1つに麒麟獅子舞がある」と話す。

 同じ文化圏ということでこんなことも。「高校野球で応援するのは鳥取。兵庫を応援することはない。但馬の学校が甲子園に出たら違うと思うけど」とは、鳥取・岩美町の男性。やはり地域がベースになっている。

鳥取県岩美町
鳥取県岩美町を取材する谷五郎さん

 一方、東の県境も「生活圏」は同じといい、豊岡市や福知山市などでも「普段は県境を意識しないが、移動の自粛が呼び掛けられ意識した。不便を感じた」という声が聞かれた。但馬には県境を超えた「地域の生活圏」が存在する。

※この記事は2020年12月27日放送、ラジオ関西制作『BORDER~ヒョーゴスラビアにおける県境とは』をもとに、再構成しました。


『BORDER~ヒョーゴスラビアにおける県境とは』アーカイブ記事
(1)淡路…淡路に「阿波踊り」の文化が残る地域も?!
(2)播磨…「備前」なのに、兵庫!?

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