姫路城マラソン中止も、沿道の菜の花畑にコロナ退散祈願の巨大文字アート そして「春が来た!」姫路・夢前町

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 菜の花畑に新型コロナウイルスの終息を願う巨大文字。このプロジェクトを、姫路市夢前町・玉田地区の地域おこし・町おこしグループ「ゆめ街道づくり実行委員会」が実現させた。

「衆怨悉退散(しゅうおんしったいさん)」〈※画像提供 ゆめ街道づくり実行委員会 2021年2月27日・ドローン撮影〉

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で「世界遺産・姫路城マラソン(毎年2月に開催)」の2年連続中止が決まる中、ランナーへのおもてなしとして広がる菜の花畑に、2021年はコロナ収束を願い、菜の花でかたどられた文字が浮かび上がった。

『衆怨悉退散(しゅうおんしったいさん)』。観音経の一節で、『怨念や災いが悉く(ことごとく)なくなる=災い・禍を退ける』という意味。2020年9月、菜の花畑を見渡すことができる書写山円教寺の大樹孝啓長吏(住職)が揮毫(きごう)した。

書写山円教寺の大樹孝啓・第百四十世長吏 (住職) が揮毫〈※撮影・画像提供 ゆめ街道づくり実行委員会 2020年9月〉
『怨念や災い、悉く(ことごとく)なくなる」疫病退散を祈願する観音経の一節〈※撮影・画像提供 ゆめ街道づくり実行委員会 2020年9月〉

 ゆめ街道づくり実行委が2020年秋、米の収穫が終わった夢前町玉田地区の水田・約8.5ヘクタール(約2550坪)もの畑に、地元住民らの協力も得て1000万本の菜の花を植え、文字に合わせて杭を打った。幅約30m×150m(1文字あたり30m×30m)にわたる巨大文字だ。この巨大文字は書写山上からも見ることができる。

 墨で書かれた書体を忠実に再現、1文字あたり300本以上のくいを打ち、ビニールテープで結んだ。2020年、菜の花は満開だったが姫路城マラソンはコロナ感染拡大への懸念から開催されず、ランナーを迎えられなかった。そして今年(2021年)も中止に。夢前町でもコロナ禍による観光業・産業の落ち込みが深刻となり、宿泊業や農業、飲食業者らで構成する実行委は活性化のため「ゆめさき菜の花プロジェクト」を立ち上げた。

クラウドファンディングで資金を募り、プロジェクトは進んだ〈※撮影・画像提供 ゆめ街道づくり実行委員会〉

 大樹長吏(住職)が書いた文字は、書写山山頂から読めるよう文字の上下を平たくそろえ、斜めからでも読みやすくなるようデザイン。文字の部分だけ刈り取って石灰をまき、3月にかけて菜の花の黄色いカーペットの中に白く浮き上がった文字を楽しめる。実行委はインターネットで資金を調達するクラウドファンディングで費用の一部をまかなった。

■「これこそが、アフター・コロナの町おこし」実行委・衣笠愛之(よしゆき)さん

「ゆめ街道づくり実行委員会」 副委員長・衣笠愛之さん

 衣笠さんは農業ひとすじ。農業法人「夢前夢工房」の代表でもある。毎年、姫路城マラソンの開催時期が見頃となるように地元自治会と協力して早咲きの品種を栽培している。マラソン開催時は、一面に広がる菜の花が夢前川沿いを北上するランナーに声援を送る。

「田んぼアートの一環として、菜の花畑で姫路城マラソンの沿道を盛り上げていたんですが、2年連続の中止……しかしコロナの影響で『違う形で菜の花畑を見て、喜んでいただけたら』という思いで呼びかけたところ、円教寺の大樹長吏(住職)からご揮毫いただけることに。『衆怨悉退散(しゅうおんしったいさん)』。実は最初、読み方もわからなくて……でもこの五つの文字の意味を知り、重みを感じました。そして隣の安富町からはにぎやかな案山子のご提供もあり、この文字に石灰を敷くときも、地元の若者たちが体じゅう真っ白になって手伝ってくれて。ドローンでも撮影したんですよ。アフター・コロナでの地域おこし・町おこしって、こうした身近な助け合いや協力がきっかけで元気になれるのかなあと思いました。Facebookなどでの積極的な発信も大きな力になりました」とプロジェクトの進捗を振り返る。

菜の花畑では案山子がお出迎え

 そして「将来的には夢前町から姫路市、そして兵庫県全体に農業で地域活性化ができればと思うんです。コロナ禍で密になってはいけないとは言われますが、1つのプロジェクトを通して人と人とがつながることができる、とても素敵なことです。春先に目にする黄色い菜の花、何かワクワクしませんか? 来られた方々からも鮮やかな菜の花から元気がもらえると聞きます。寒い冬を乗り越えて、菜の花の黄色を見ると確実にやって来る春を感じる、これが動物的な本能かも知れませんね」と顔をほころばせた。

■「心ひとつに、つながる ここに結願」書写山円教寺・執事長 大樹玄承さん

書写山円教寺・大樹玄承執事長

「書写の山麓には十の集落があって、1つが玉田。山へ続く索道があったんです。玉田地区ではこれまでにも稲穂で姫路城や白鷺を表現する田園アートに取り組んでいました。今回は『衆怨悉退散(しゅうおんしったいさん)』という文字、書写山上からも斜めに眺めてもきちんと見えるように“ひずみ”をかける工夫をしています。コロナ禍で皆さんが密を避け、他人と接点を持たずに1人ぼっちになってしまい、どうしてもクヨクヨしたり、人を恨んだりしてしまいがちですが、同時に1人になるということは、私たちがこれまでいかに平穏な日々を過ごしてきたか、親や祖先から受け継いできたものを、どこかで置き去りにしたのではないかということを改めて考える機会を与えられたのかも知れません。菜の花が咲き、春の陽気に誘われながら、心をひとつにしてつながることを目指した企画が実を結びました」と歓迎した。

■「ステイホーム、でも青空の下で菜の花から元気もらって!」姫路市地域おこし協力隊・臼井千夏さん

案山子雛(かかしびな)も春の訪れを祝福

 夢前町の隣町・姫路市安富町「奥播磨かかしの里」親善大使で、写真作家でもある臼井さんは、“ひな人形かかし”を連れて菜の花畑に。「毎年、姫路城マラソンでにぎわう菜の花畑一帯、ことしも美しく咲きました。マラソンは中止でも、コロナ退散の祈願祭の場として活用できたことをうれしく思います。ステイホームとは言われますが、こうして青空の下、鮮やかな菜の花の色に元気をもらうのもいいですね」と話した。

護符の挿絵は姫路市のカラー・アートセラピスト みやざきあゆみさんによる

 このほか、2007年に相生市でアスファルトを押しのけて出現した「ど根性ダイコン『大ちゃん』」の絵本を出版したカラー・アートセラピスト(色彩・芸術療法士)、みやざきあゆみさんが『衆怨悉退散』の文字が書かれた紙札(護符)に菜の花の挿絵を描いた。

絵馬にも託すコロナ収束への願い〈※撮影・画像提供 ゆめ街道づくり実行委員会 円教寺〉

 2021年もコロナと向き合う私たち、しかし確実に季節はめぐる。書写山の麓、夢前にも春が来た。菜の花は3月もしばらく見頃。書写山ロープウェイ「書写駅」の北東、夢前川をはさんで私たちの目を和ませる。

案山子雛(かかしびな)も菜の花の黄色に元気を与えられ~姫路市夢前町玉田

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