衣笠さんは農業ひとすじ。農業法人「夢前夢工房」の代表でもある。毎年、姫路城マラソンの開催時期が見頃となるように地元自治会と協力して早咲きの品種を栽培している。マラソン開催時は、一面に広がる菜の花が夢前川沿いを北上するランナーに声援を送る。
「田んぼアートの一環として、菜の花畑で姫路城マラソンの沿道を盛り上げていたんですが、2年連続の中止……しかしコロナの影響で『違う形で菜の花畑を見て、喜んでいただけたら』という思いで呼びかけたところ、円教寺の大樹長吏(住職)からご揮毫いただけることに。『衆怨悉退散(しゅうおんしったいさん)』。実は最初、読み方もわからなくて……でもこの五つの文字の意味を知り、重みを感じました。そして隣の安富町からはにぎやかな案山子のご提供もあり、この文字に石灰を敷くときも、地元の若者たちが体じゅう真っ白になって手伝ってくれて。ドローンでも撮影したんですよ。アフター・コロナでの地域おこし・町おこしって、こうした身近な助け合いや協力がきっかけで元気になれるのかなあと思いました。Facebookなどでの積極的な発信も大きな力になりました」とプロジェクトの進捗を振り返る。
そして「将来的には夢前町から姫路市、そして兵庫県全体に農業で地域活性化ができればと思うんです。コロナ禍で密になってはいけないとは言われますが、1つのプロジェクトを通して人と人とがつながることができる、とても素敵なことです。春先に目にする黄色い菜の花、何かワクワクしませんか? 来られた方々からも鮮やかな菜の花から元気がもらえると聞きます。寒い冬を乗り越えて、菜の花の黄色を見ると確実にやって来る春を感じる、これが動物的な本能かも知れませんね」と顔をほころばせた。
■「心ひとつに、つながる ここに結願」書写山円教寺・執事長 大樹玄承さん
「書写の山麓には十の集落があって、1つが玉田。山へ続く索道があったんです。玉田地区ではこれまでにも稲穂で姫路城や白鷺を表現する田園アートに取り組んでいました。今回は『衆怨悉退散(しゅうおんしったいさん)』という文字、書写山上からも斜めに眺めてもきちんと見えるように“ひずみ”をかける工夫をしています。コロナ禍で皆さんが密を避け、他人と接点を持たずに1人ぼっちになってしまい、どうしてもクヨクヨしたり、人を恨んだりしてしまいがちですが、同時に1人になるということは、私たちがこれまでいかに平穏な日々を過ごしてきたか、親や祖先から受け継いできたものを、どこかで置き去りにしたのではないかということを改めて考える機会を与えられたのかも知れません。菜の花が咲き、春の陽気に誘われながら、心をひとつにしてつながることを目指した企画が実を結びました」と歓迎した。
■「ステイホーム、でも青空の下で菜の花から元気もらって!」姫路市地域おこし協力隊・臼井千夏さん