菜の花畑に新型コロナウイルスの終息を願う巨大文字。このプロジェクトを、姫路市夢前町・玉田地区の地域おこし・町おこしグループ「ゆめ街道づくり実行委員会」が実現させた。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で「世界遺産・姫路城マラソン(毎年2月に開催)」の2年連続中止が決まる中、ランナーへのおもてなしとして広がる菜の花畑に、2021年はコロナ収束を願い、菜の花でかたどられた文字が浮かび上がった。
『衆怨悉退散(しゅうおんしったいさん)』。観音経の一節で、『怨念や災いが悉く(ことごとく)なくなる=災い・禍を退ける』という意味。2020年9月、菜の花畑を見渡すことができる書写山円教寺の大樹孝啓長吏(住職)が揮毫(きごう)した。
ゆめ街道づくり実行委が2020年秋、米の収穫が終わった夢前町玉田地区の水田・約8.5ヘクタール(約2550坪)もの畑に、地元住民らの協力も得て1000万本の菜の花を植え、文字に合わせて杭を打った。幅約30m×150m(1文字あたり30m×30m)にわたる巨大文字だ。この巨大文字は書写山上からも見ることができる。
墨で書かれた書体を忠実に再現、1文字あたり300本以上のくいを打ち、ビニールテープで結んだ。2020年、菜の花は満開だったが姫路城マラソンはコロナ感染拡大への懸念から開催されず、ランナーを迎えられなかった。そして今年(2021年)も中止に。夢前町でもコロナ禍による観光業・産業の落ち込みが深刻となり、宿泊業や農業、飲食業者らで構成する実行委は活性化のため「ゆめさき菜の花プロジェクト」を立ち上げた。
大樹長吏(住職)が書いた文字は、書写山山頂から読めるよう文字の上下を平たくそろえ、斜めからでも読みやすくなるようデザイン。文字の部分だけ刈り取って石灰をまき、3月にかけて菜の花の黄色いカーペットの中に白く浮き上がった文字を楽しめる。実行委はインターネットで資金を調達するクラウドファンディングで費用の一部をまかなった。
■「これこそが、アフター・コロナの町おこし」実行委・衣笠愛之(よしゆき)さん