1995年の阪神・淡路大震災後、明石市職員としてがれきの収集業務に従事し、悪性腹膜中皮腫で死亡した男性(当時49・2013年死亡)の妻が、業務中のアスベスト(石綿)吸引による公務災害(=公務員の労災)を認めなかった地方公務員災害補償基金(本部・東京都)の処分取り消しを求めた訴訟の判決で、神戸地裁は26日、「震災の影響を正しく評価していない」などとして処分を取り消した。震災復旧に携わった公務員について、アスベスト被害の公務災害を認めた司法判断は初。
男性は阪神・淡路大震災後、明石市内で倒壊した建造物のがれきの収集業務に従事した。2012年6月に悪性腹膜中皮腫と診断され、当時の業務が原因だとして公務災害の認定請求、2013年10月に死亡した。地方公務員災害補償基金は2014年3月、死亡とアスベスト飛散との因果関係が明確でないとして、公務外の災害とした。
男性は亡くなる前、「石綿を吸ったのは震災直後のがれき収集しか思い当たらない」と周りに話していた。2005年、機械メーカー大手、クボタ・旧神崎工場(尼崎市)のアスベストが原因で、周辺住民の健康被害が明らかになったが(クボタ・ショック)、男性はアスベストを扱う場所の近くで生活したことはなく、他に理由が思い当たらなかった。
神戸地裁は判決で「男性は業務内容から日常的にアスベストにさらされる環境にあった。震災後の社会状況から、こうした資料がないのはやむを得ず、中皮腫を発病した他の原因も見当たらない」と指摘した。
男性の妻は、判決後「まだ生きたいという主人の願いを胸に、これまで頑張ってきて良かったと思う」と話した。