芸歴20年以上のベテラン芸人が「大学生」になった理由 元「漢検3級不合格」から国語教員へ オジンオズボーン篠宮インタビュー

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 キングコングや南海キャンディーズ、オードリーらと同期、芸歴20年を超えるベテラン芸人が、この春「大学生」になったといいます。

 松竹芸能のお笑いコンビ「オジンオズボーン」の篠宮暁さんは、2019年に「鬱」の書き方をリズミカルに覚えるネタがバズったことをきっかけに「漢字芸人」の活動を開始。2020年には2冊の漢字を覚える書籍を出し、話題になりました。さらに国語の教員免許取得を目標に2021年4月、日本大学通信教育部に入学。芸人として異色の分野で活躍する篠宮さんに、漢字の楽しさや大学入学の理由について、お話を聞きました。

◆あんなに苦手だった勉強が、今「楽しい」

―――漢検3級に合格したことで、漢字の勉強を始めたそうですね。マネージャーさんが(篠宮さんの)相方の高松(新一)さんに出した「漢字を覚える」という宿題に、篠宮さんも隠れてチャレンジしたのがきっかけとうかがいました。なぜ3級合格で終わらず、継続して勉強しようと思ったのでしょうか?

【篠宮】実は、中学時代にも漢検3級を受けているんですよ。でも全然受からなくて。後々考えたら四字熟語とかの勉強を全然してなかったので、受かるはずがないんですけどね。大人になってイチから勉強してみたら、ほぼ満点を取れたんです。で、「うわ、あんなに点数取れへんかったのに、楽しい」と。「もっともっと勉強したらどこまでいけんねやろ」みたいな気持ちになって。それで、3級で終わらず、勉強を続けることにしました。僕は学生時代にあんまり勉強してなかったので、やればやるだけ頭が良くなるっていうのが楽しかったんです。難しい漢字を書けるようになるのが嬉しいという、自己満足でしかないんですけどね。

―――今年の4月に日本大学通信教育学部に入学されました。なぜ大学に通おうと思ったんでしょうか?

【篠宮】僕は高校生で芸人になったので、最終学歴が高校なんです。大学をまったく知らないままこの歳になっちゃいましたけど、節目節目で「大学行ってたらどうなってたかなぁ」と思うことがあって。ちょっとコンプレックスもあったのかな。それで、(大学に行けば)「教員免許も取れるし大学の卒業資格も取れる。一石二鳥やん」と思いついて、すぐに決めました。

―――大学に行こうと決めたのは、いつくらいだったんでしょうか。

【篠宮】今年(2021年)の3月に、漢字検定準1級に合格したんですよ。「よし、次は1級だ」となったんですが、1級って東大に合格するくらい難しいんです。合格率も低いし、むちゃくちゃ勉強せなあかんけど、合格できるとしてもだいぶ先やな……と、ちょっと億劫になって。「どうせ時間がかかるのなら、先生になるほうがおもしろそうやな」みたいな。1級をとってもなにも無さそうだけど、大学行くこと自体もおもしろいし、教員免許が取れたら更におもしろそうだなと。

「日本漢字能力検定 準1級」の合格証書を持つ篠宮さん

―――3月に決めて、4月に入学ですか!

【篠宮】思いついてからは早かったですね。受験勉強で1年費やそうかなとも思ったんですが、どうやら通信制だとお金を払えば入れるぞ、と。受験してキャンパスに通うのもおもしろそうだと思いつつ、通信制でも教員免許は取れるし、「じゃあこっちでええやん」みたいなね。(大学入学は)嫁が一番驚いていました。相談したら「おもしろそうじゃん」って乗っかってくれて、決意しました。

「日本大学 通信教育部 文理学部 文学専攻(国文学)」へ進学した篠宮さん

―――実際に大学で勉強してみて、楽しいですか?

【篠宮】めちゃめちゃおもろいです。相対性理論とか、今までふんわりとは知っていたけど「ぶっちゃけなんやねん」みたいなことを理解できるのがおもしろいですね。

―――教員免許を取るということは、教育実習もあるんですよね。

【篠宮】あります。丸1か月。うまいこと行けば3年後のどこかで、基本は母校に行くみたいです。どんなに忙しくても1か月間、休みを取ろうと思ってます。

―――前代未聞じゃないですか? 芸人さんが1か月休んで、教育実習に行くなんて。

【篠宮】芸人仕事がスカスカで、必死に教員免許を取りに行くということにはならないようにしたいですね(笑)。3年後、(芸人として)忙しくやっててほしいです。生徒から「知らねぇ芸人来たよ」とか言われんのは嫌やな(笑)。

―――漢字や国語が苦手な子どもたちに、オススメの勉強法はありますか?

【篠宮】教室の後ろにある黒板に難しい漢字を書いて、自慢することを目標にやると良いと思います。あと、友だちの名前を覚えることから入るのも良いかもしれないです。名前に使われている漢字って、実は準1級とか2級の難しいものが多かったりするんですよ。

オジンオズボーン篠宮暁の秒で暗記! 漢字ドリル (TJMOOK)

◆いつかは「漢字の本場」、中国進出

―――漢字や特撮など、篠宮さんはお笑い以外にも多岐にわたる分野で仕事をしている印象があります。「自分の好きなことを仕事にしたい」という人は多いと思いますが、なかなか難しいことですよね。なぜ篠宮さんはいろんな分野で仕事ができているんだと思いますか?

【篠宮】「お笑いを頑張ったご褒美」でいただいてる仕事、という感じはすごくしています。たまたま自分の好きな分野が他の芸人さんとかぶっていなくて、競争率が薄かったというのもあるかもしれない。もしサッカーや野球だったらいっぱい競争相手がいるんで、仕事になってないと思うんです。あとは、やっぱり「好き」って言うことですね。ブログとかTwitterでも良いんですが、とにかく外に発信しないと。「これあいつ好きやな」ということを知ってもらわんことには仕事にならないのかなと思います。あとは結果論なんですが、(仕事を)取りに行かない方が仕事になるかもしれないです。

―――ガツガツしない、ということですか?

【篠宮】メインは「お笑い」ですからね。「こうしたらおもしろいかも」と動いていくことで、仕事として返ってきているかもしれないです。例えば「鬱」の書き方でバズったとき、「次どうしたらおもしろいかな」と考えたんです。そういえば、清水寺で年に1回「今年の漢字」をでっかく書いてるな。あそこ行きたい、どうしたら行けるんだ……と辿っていったら協力してくれる人が出てきて、京都の漢字ミュージアム(漢検漢字博物館・図書館「漢字ミュージアム」)につながりました(※)。お金にしようと思って動くんじゃなく、足を使って好きなことを突き詰めていくと良いと思います。
(※2019年11月15日~2020年1月5日に、「秒で漢字暗記」の動画が漢字ミュージアム内のシアターで上映された)

―――芸人さんじゃなくても、「好きなことを仕事につなげたい」と思う人にとって役立ちそうな考え方です。「漢字芸人」として、今後チャレンジしたいことはありますか?

【篠宮】まずは、教員免許の取得ですね。「漢字芸人」って何人かいるんですが、教員免許を持ってる人はいないと思うので。あと、大きい夢として、中国に行きたいですね。漢字の本場ですから。今やってる漢字芸と同じことを中国でもやりたいんです。漢字を分解して、中国語で展開するという。

【秒で漢字暗記】漢字「鬱(うつ)」の覚え方

―――中国ですか! なにがきっかけで中国を意識するようになったんでしょうか?

【篠宮】以前「シャッフル男爵」っていうリズムネタが台湾でバズったことがあるんですよ。それでネタをしに行ったんですけど、むちゃくちゃ楽しかったんですよね。ウケ方も欧米チックで、「フゥ~!!」みたいな(笑)。また機会があったら行きたいなと思っていたところに、漢字のネタができて。「行けるな」と。

―――最後に、篠宮さんの1番好きな漢字を教えてください。

【篠宮】「尖」ですね。上が小さい、下が大きいっていう簡単な漢字なんですが、「とがる」を書けって言われても書ける人は、意外と少ない。でもこんなに、形を表してる漢字は無いなと思って。こっち(上部)が小さくてこっち(下部)が大きくなっていて、尖ってる感じがあるじゃないですか。「誰が考えたんやろう、ようできてんなぁ」って。あと書いてて楽しいのは、「濤」とか「躊」の右側ですね。「シフエイチロスン」という覚え方なんですが、これを書いてるときが1番気持ちいいです。

(取材・文=堀越愛)



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