旧優生保護法(1948~1996年)による強制不妊手術問題で、兵庫県明石市の泉房穂市長は、国の一時金支給制度では対象外の配偶者にも給付金を支給する全国初の被害者支援条例案を9月市議会に提出する。
明石市によると、給付金は1人300万円。 不妊手術を受けた本人だけでなく、旧優生保護法問題をめぐる国の一時金支給法で対象外となっている配偶者や、中絶手術を受けた人にも支給する。国家賠償訴訟では手術から提訴までに損害賠償請求権が消滅する20年の「除斥期間」が壁となっているが、条例では申請期限は設けない。
明石市には、3日に神戸地裁で判決が言い渡された国家賠償請求訴訟の原告で、聴覚障害のある夫(89)・妻(88)が暮らしている。判決では旧優生保護法を違憲としつつも、20年の除斥期間が経過したとして、原告らの請求を棄却した。条例制定に先立ち市明石市は7月、犯罪被害者等支援条例を適用して夫妻に40万円の支援金を給付した。泉市長はラジオ関西の取材に対し、「旧優生保護法は違憲、しかし提訴が遅いために請求棄却、こんな理不尽は許されない。わずか20年で国家を免責する必要性はない。国の法律は不十分で全く救済になっていない」と批判した。
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11日、全国被害弁護団などが国会(参議院議員会館)内で開いた集会で、超党派議員連盟に対し、全面解決に向けて早急に動くよう求める要請書を提出した。夫妻も泉市長とともに明石市役所からオンラインで参加。「1960(昭和35)年に結婚し、子どもがたくさん欲しいね、と話し合っていたので、妊娠した時は大変嬉しかった。翌日に母が義母から呼び出され、何かを話し合っていた。耳が聞こえず、その内容はわからなかった。その後、母に病院に連れて行かれ、医師からの説明もないまま中絶手術をされた。もう一度赤ちゃんが欲しいと思ったが二度と妊娠することはなかった。強制不妊手術をされていたことを知ったのは2018(平成30)年。優生保護法という法律の存在を教えてもらい、そういうことだったのか、とわかった。私の身体を元に戻して欲しい。国が間違ったことをしたのだから、謝罪してもらいたい」と述べた。このほか兵庫訴訟の原告で脳性まひのある神戸市の女性(65)らもコメントした。
泉市長は夫妻の犯罪被害者支援金支給に触れ「違憲なのに救済されない、違憲ならば20年の除斥期間にかかわらず、被害者を救済すべきは当然だ。殺人事件の時効は、法改正で2010年に撤廃された。優生保護法についても、制定した立法府が向き合う問題。立法府の責任において、誤った優生保護法、理不尽な除斥期間の撤廃をお願いしたい」と超党派の議員に訴えかけた。