兵庫県加西市は、酒米の王者“山田錦”の一大生産地。酒米の農家や、日本酒の蔵元なども多数存在するエリアだが、現在コロナ禍の影響で日本酒の需要が激減している。
そのなかでも奮闘する加西の山田錦やお酒を支える人々に話を聞く。今回は天保10年(1839年)から続く酒蔵「富久錦」代表取締役社長・製造責任者の稲岡敬之さんだ。
◆「富久錦」のこだわり
加西市内の酒米のみを使用した酒づくりを平成9年度から行っている富久錦。それは「地酒は地域で造るもの」という思いがあるからこそ。「お酒は酒蔵だけでなく、地域の自然や地域の人々、そして人の思いが集まってできるものだ」という考えで日本酒造りに取り組んでいる。その中心で舵をとる稲岡さんは、加西市の酒米について次のように語る。
「播州平野はお米づくりに向いている土地ですが、加東市や三木市に比べると(加西市は)少し酒米づくりに不向きな面もあります。だからこそ、それをカバーするために農家の方々が工夫をして手間と心を込めている、それが加西市で取れる酒米の特徴だと思います」
富久錦では、地元農家が丹精込めて作った酒米を伝統的な製法で日本酒にしている。その酒蔵には鉄製の桶と木製の桶があり、鉄桶は温度管理がしやすく理想の味にアプローチしやすいという特徴がある。一方、木桶はコントロールがしにくいが地域の特色を出しやすく、稲岡さんによると「職人の腕の見せ所」なのだとか。木桶の場合、風味の変化が予測しにくいが、それに対してどう対処するか考えることも職人にとっては楽しみの一つ。予想以上の結果が得られることも多く、それが木桶仕込みの魅力だと語る。
◆これからも「挑戦を続ける老舗」を目指して
「現代の食生活の変化に合わせ、あらゆるシーンで日本酒を飲んでほしい」、そんな思いから、大吟醸や純米酒の他、リキュール、果実酒など、様々なお酒を通して、富久錦は伝統を守りながら新たな挑戦を続けているという。
※ラジオ関西『PUSH!』2021年9月22日放送回「加西山田錦!酒ものがたり」より
■富久錦
【公式HP】