オンライン集会で「私たち原告側が高裁で逆転(勝訴)したとしても、国は上告してくる。上告審は通常、書面審理で終わってしまう。何とか口頭弁論に持ち込まなければならない」と発言した。
藤原弁護士はかつて、ある障がい者の女性が障害福祉年金の受給を理由に児童扶養手当の支給を断られ、「生存権」を定めた憲法25条に反するとして、兵庫県を相手に最高裁まで争った経験がある。これが人権訴訟として語り継がれる「堀木訴訟」である。
1972年、一審・神戸地裁は原告・堀木文子さん(故人)の訴えを全面的に認め、障害母子世帯に児童扶養手当を支給しないのは憲法14条の平等保障原則に違反し、無効であるとの判決を下した。
この判決を受け、国会はその翌年、児童扶養手当と障害・老齢福祉年金との併給を認める法改正を行った。しかし、その一方で1975年、二審・大阪高裁は、堀木さんに逆転敗訴を言い渡した。堀木さんは上告、最高裁の長い沈黙が続いたが、5年経ち小法廷から大法廷へ。それから1年後、口頭弁論を開いた。1982年に敗訴判決が出されて、裁判としては終結したが、弁護団はその間、ずっと歩みを止めなかった。
藤原弁護士は障がい者の人権を鑑みて、「損害賠償を請求できる権利が20年で良いのか、再検討を迫ることが重要だ」と訴えた。そして「国が謝罪の態度を表し、障がいの有無にかかわらず、差別のない社会にしなければならない」と結んだ。
オンライン集会には、全国初となる旧優生保護法の被害者支援条例が成立(2021年12月)した兵庫県明石市の泉房穂市長も参加、 条例成立までに3回の採決を経て、そのプロセスに明石市の障害者団体すべてが賛成したことなどを挙げた。
そして「やさしい社会を作ることはすべての人のテーマ。皆の声が議会を動かした。条例の成立は”まちづくり”そのもの」と話し、被害者を見捨てず、誰ひとり取り残さない障がい者支援がSDGs(持続可能な開発目標)の推進にもつながると訴えた。
・・・・・・・・・・
旧優生保護法のもとで、少なくとも2万5000人が強制不妊手術を受けたとされる。2019年、被害者に一時金320万円を一律支給する救済法が施行された。しかし金額の低さや、手術を受けた本人に対象を限っていることなどの問題点が指摘されている。全国の受給者は約3.8%の960人(2021年12月末現在)にとどまっているという。