沢田さんは日本の男性歌手としてはかなり早い時期にメイクを始めた人なんですが、特にこの時期のド派手なメイクは音楽ファンに大きな衝撃を与えたようです。のちにお化粧系の音楽を始めたミュージシャンも、メイクに興味を持った原点は当時の沢田さんだったという人が多いです。
【橋本】 映像を観たんですが、それはとても感じました。あの人もこの人も影響受けてるんじゃないかと……!
【中将】 ロックに興味を持ち始めて、反動で歌謡曲が嫌いになった少年・少女たちも例外的に「ジュリーはかっこいい!」と認めていた人が多いようです。当時の沢田さんは歌謡界のトップグループにいながら、流行の最先端であり、マニアックなロック精神も感じることのできる希少な歌手だったんだと思います。
あと、話の本筋からはそれるんですが、「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」のイントロの不思議な女性コーラスはアニメ『アルプスの少女ハイジ』のテーマ曲「おしえて」を歌っている伊集加代子(いしゅうかよこ)さんだということはどうしてもお伝えしておきたいです。
【橋本】 マジですか(笑)!
【中将】 話を本筋に戻します(笑)。
EXOTICS期はいろんな意味で攻めた曲が多いです。1983年にリリースされた「背中まで45分」はロックみはほとんど感じられないスローテンポなバラードなんですが、6分近くもあるのに終盤までサビがないという歌謡曲としては異例すぎる構成なんです。
【橋本】 えっ! 攻めすぎ……アルバム曲ではないんですよね?
【中将】 たしかに、そもそもは井上陽水さんが全曲の作詞作曲を手がけた「MIS CAST」というアルバムの収録曲として作られました。でも、それを沢田さんが気に入ってシングルカットに推薦しちゃうんですよね。結果はオリコンウイークリーランキングで20位。ここまで攻めたテイストながらヒットを出し続けていた沢田さんですが、この曲でコケたことがその後の先行きに大きな影を落とします。
【橋本】 気に入った曲をシングルにできたこと自体は歌手冥利だったでしょうにね……。