児童虐待、いじめ、不登校、ハラスメント、自殺など、現代の子どもを取り巻く環境は深刻さを増しています。このような問題に直面したとき、児童相談所や各学校のスクールカウンセラーなど相談する機関は様々ですが、子どもの権利のために十分に機能しているかといえばそうではありません。現代の子どもの権利を守るためには、どのような課題があるのでしょうか。
兵庫県弁護士会子どもの権利委員会の委員として、子どもの権利擁護に関する活動を行なう曽我智史弁護士に聞きました。
---まず、「子どもの権利」とは何でしょうか?
【曽我弁護士】 すべての子どもたちが健やかに、自分らしく育つために必要な「当たり前のこと」です。この子どもの権利の基本は、1989年11月の国連総会で採択された「子どもの権利条約」に定められており、日本は1994年に批准しました。条約は、前文と54条の条文からなるのですが、大きく4種類に分類することができます。
◆「子どもの権利」とは
1.「生きる権利」…全ての子どもの命が守られること
2.「育つ権利」…持って生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう医療や教育、生活への支援などを受け、友達と遊んだりすること
3.「守られる権利」…暴力や搾取、有害な労働などから守られること
4.「参加する権利」…自由に意見を表したり、団体を作ったりできること
---曽我先生は、この子どもの権利を守るために、どのような活動をされているのでしょうか。
【曽我弁護士】 子どもの権利委員会では、虐待を受けた子どもの保護や、いじめを受けた子どもから相談を受け解決策を探るなど、子どもが直面した問題に一緒に取り組み、支援するといった活動を行なっています。中には、学校との間に入って関係調整することもあります。
---課題はあるのでしょうか。
【曽我弁護士】 子どもの権利を守る活動をしていて見えてくる課題のひとつに、学校の先生が多忙すぎるという実情があります。
例えばいじめの問題で、残念なことに、学校側が隠蔽(いんぺい)するという事例がありましたが、その背景には、学校の先生が多忙すぎて、対応しきれていない現状があるのではないかと思います。まず、学校の先生の雇用条件を見直さない限り、子どもを守るための基盤ができないため、子どもの権利も守れないのではないかと思います。
学校には熱心な先生がたくさんいらっしゃるのに、隠蔽したなどネガティブなところにスポットが当てられ、全ての先生が悪いかのような誤解を受けることもあるのではないかと思います。