酸味、甘味、果実感……豆の種類や産地によって多彩な風味を感じさせ、焙煎加減で如実に変化する香りを楽しめるコーヒー。自分でコーヒーを淹れるこだわり派の人も多いことと推察するが、ハンドドリップのコツをおさえればよりおいしくなるという。
兵庫県を中心に10店舗を構えるコーヒー店「珈琲庵 珈集」の東加古川店店長、松下勇樹さんに話を聞いた。
まず店について尋ねたところ、店名の“珈集”には、珈琲好きがたくさん集まってほしいという意味が込められているとのこと。本店がある三木市で豆の焙煎をし、定期的に各店舗に新鮮なものが届けられるそう。和テイストの木造建築でできた東加古川店が今年2月にオープンしたばかり。立派な庭園があり店内には屏風などが飾られ、しっとりと落ち着いた雰囲気を醸す。
同店ではブレンドコーヒー6種類、ストレートコーヒー12種類を提供しているとのこと。ブレンドコーヒーのネーミングは源氏・若紫・藤壺など『源氏物語』の世界から付けられている。ストレートコーヒーには椿・朝顔・向日葵(ひまわり)など花の名前が冠されている。それぞれに、「苦味」「酸味」「コク」「甘味」の4つの項目を3段階評価で表示しているのは、注文の際の参考にしてもらう意図があるそう。
松下さんが伝授するハンドドリップの工程を実践すれば、店さながらのコーヒーが味わえるという。
【ステップ1:蒸らし】
※ポイント→注ぐ湯の温度は90度以上!
〈1〉ドリッパーにセットした粉コーヒー全体に、500円玉くらいの円を描くようにしてゆっくり注いでいく。
〈2〉このときポットの注ぎ口から出る湯量が一定になるように注意する。
〈3〉蒸らしは20~30秒でOK。必要以上に蒸らすと、コーヒーを抽出したときに濃くなりすぎるので気を付ける。
“蒸らし”は「深み」を出すための重要な作業だという。ドリップの際、湯は容器を経由し冷めるので温度はしっかりした熱さのものを用意してほしいと松下さん。
【ステップ2:抽出】
※ポイント→最後は湯が落ち切る前にドリッパーを外す!
〈1〉蒸らしが終わった粉に、ふたたび湯をゆっくりと注いでコーヒーを抽出する。
〈2〉湯が落ち切る直前に、再度湯を注ぐ。
松下さんの方法では、蒸らし作業も含めて3回に分けて湯を注ぐ。ただし、2回目の湯が落ちきる直前に3回目を注がないとえぐみが出てしまうととこと。3回目の湯を最後まで落とし切ってしまってもえぐみが出るため、様子を見てドリッパーを外すことが大切だそう。
同店では、店内で手作りした和菓子も提供している。季節によって商品のラインナップもかわり、旬の食材を使った和菓子を提供。和菓子とコーヒーのセットが好評だそうで、わらび粉を100%使用した「本わらび餅」は持ち帰りとしても人気。