夏の暑いさなか、つるりとしたのどごしとさっぱりした味わいがおいしい素麺。発祥は奈良県・桜井市だとされているのはご存知でしょうか。
桜井市といえば有名な「三輪素麺」の生産地ですが、実は毎年占いによって相場が決められているそうなのです。一体どういうことなのか気になった筆者は『奈良県三輪素麺工業協同組合』の小西幸夫理事長に話を聞きました。
桜井市の大神神社では毎年2月に「卜定(ぼくじょう)祭」という祭事があり、そこでその年の素麺の卸値を占う神事が行われているとのこと。
「奈良時代の飢きんの際に、大神神社の神様が素麺を作るようお告げをしたという言い伝えにちなんで、卜定祭は毎年行われています」(小西理事長)
では、どのような形で素麺の卸値が決定するのでしょうか。
小西理事長によると、三輪素麺の中でも標準的な銘柄の素麺18キロの卸値が占いによって決められるとのこと。基準となる「中値」、それより高い「高値」、安い「安値」のくじがそれぞれ用意されます。例えば今年は中値が「1万1900円」と定められ、高値が100円高い「1万円2000円」、安値が100円安い「1万1800円」となりくじの結果は「安値」になりました。三輪素麺の業者はこの占いの結果を尊重し、卸値の参考にします。
「元々は穀物の卸値を決める神事だったのが、素麺単体の卸値を決める神事に変わっていったそうです」(小西理事長)
ちなみに今年の「安値」として決まった「1万1800円」という卸値はこれまででも最も高い卸値だったとのこと。原料の小麦粉の価格高騰が素麺の値上げにも影響しているようです。
三輪素麺には4種の細さがあり、細いものから「神杉(かみすぎ)」「緒環(おだまき)」「瑞垣(みずがき)」「誉(ほまれ)」という名前が付いています。
占いで決められる“標準的な銘柄”とは「誉」のことを指し、細いものほど等級が高くなり価格も基本的には高価になるとのこと。