国の統計だけでも2万5千人が被害に遭ったとされる旧優生保護法。2018年1月から続いた提訴を踏まえ、被害者に対する一時金支給法が議員立法で成立。だが一律320万円は過酷な被害の実態に見合わず、配偶者が含まれないことなどさまざまな問題が指摘される。
支給法の対象も1万2千人と推計されている。しかし厚生労働省によると、請求者は1,068件にとどまり(2021年7月4日現在)、超党派議員連盟から批判が噴出している。今回の神戸地裁判決は支給法が対象外とする配偶者の損害賠償請求権を認定。「被害者に必要かつ適切な措置」が取られることに加え「旧法の影響を受けて根深く存在する偏見や差別の解消に積極的な措置」が講じられるよう期待すると付言した。
これまでにも同種訴訟で仙台・大阪・札幌の3地裁で違憲判断が出ており、今回の神戸地裁が4例目。違憲とされた条項の範囲は拡大してきた。「不良な子孫の出生防止」を理由に、戦後間もなく議員立法で制定された旧法が、憲法の理念と乖離していた実態が浮き彫りになりつつある。
全国各地の訴訟では提訴後、25人の原告のうち4人が死去した。被害者らの高齢化が進む中、 国の被害弁護団・新里宏二(にいさと・こうじ)共同代表は今後の全面勝訴に意気込む一方で「違憲判断が積み上がっており、政治解決は不可能ではない」とし、8月11日には国会でオンラインの院内集会を開き、解決に向けた働き掛けを強める。