兵庫県明石市は7日、 旧優生保護法(1948~1996年)により障害者らに不妊手術が強いられた問題で、国の制度で対象外となっている配偶者や中絶も対象に含み、給付金を支給する被害者支援条例案を9月市議会に提出した。
旧優生保護法の強制不妊手術をめぐる自治体による被害者支援条例は、成立すれば全国で初。 明石市議会ではこのほか、3度目となる住民投票条例案など23議案が提案された。
明石市には、8月に神戸地裁で判決が言い渡された国家賠償訴訟の原告で、聴覚障害のある夫(89)・妻(88)が暮らしている。判決では旧優生保護法を違憲としつつ、除斥期間が経過したとして、原告らの請求を棄却した。
条例案によると、給付金は1人300万円で、不妊手術を受けた本人だけでなく、旧優生保護法問題をめぐる国の一時金支給法で対象外となっている配偶者や、中絶手術を受けた人にも支給する。 国家賠償訴訟では手術から提訴までに損害賠償請求権が消滅する20年の「除斥期間」が壁となっているが、条例では申請期限は設けない。 国が2019年に施行した一時金支給法は、旧法の下で不妊手術を受けた人に一律320万円を支給する内容。
2011年、全国に先駆けて犯罪被害者らに上限300万円を支給する条例が制定された明石市では、手術を受けた人たちについて「子どもを持つ権利を奪われた被害者」としてとらえた。
条例の検討にあたり、当事者夫妻や学識経験者等をアドバイザーに委嘱、論点を整理したうえでパブリックコメント(意見募集)を8月に行った。
明石市によると、寄せられた意見(抜粋)として
▼「だれ一人取り残さない」市の姿勢が少しずつ変わってきたことを実感する
▼優生保護法の被害を初めて知り、心が締め付けられる思いだ
▼兵庫県では「不幸な子供の生まれない運動」としてその法律を先導していた事実は、決して許されることではない
▼全国でもいち早くこの問題に真摯に取り組む姿勢は誇り
など、意見総数260件すべてが賛成意見(うち明石市民40件)だったという。
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