あどけない少女がきわどいセクシーソングを歌う……。現代のアイドルソングにも影響を与えた“青い性路線”とは? シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が、山口百恵の楽曲を通して昭和ポップスのトンデモな世界観に迫ります。
【中将タカノリ(以下「中将」)】 オーディション番組『スター誕生!』で準優勝をおさめて1973年に鳴り物入りでデビューした百恵さんだけど、デビュー曲の「としごろ」はあまり売れませんでした。で、あせったプロデューサーの酒井政利さんが作詞家に指示して作らせたのが、青い性路線の第1作となる「青い果実」。
【橋本菜津美(以下「橋本」)】 「あなたが望むなら 私何をされてもいいわ」。14歳でこの歌詞を歌ったのがすごいですね。売れへんグラビアアイドルの水着の生地が少なくなっていくみたいな……(笑)。あらためて昭和って攻めてるなと思います。
【中将】 妄想しちゃう男子も多かったと思います。本人も初めて歌詞を見せられた時はショックだったみたいですね。
【橋本】 私は百恵さんにはもっと大人びた、落ち着いた歌を歌っているイメージがありました。「秋桜」「さよならの向こう側」とか。でも原点はこういう路線だったんですね。
【中将】 芸能界の理論は「売れるのが正義」なので、そういう意味では酒井プロデューサーの判断は正しかったと言えます。青い性路線はこの後2年ほど続きますが、1974年にはその代表作となる「ひと夏の経験」がヒットしています。
【中将】 いきなり「あなたに女の子の一番 大切なものをあげるわ」。曲の作りとしては「青い果実」とさほど変わりませんが、よりショッキングでおじさん胸キュンな気がしますね。
【橋本】 こういう“初体験”みたいな曲って、なんで舞台がだいたい夏なんでしょうか?
【中将】 冬だと寒すぎてテキトーな場所ではできないからじゃないでしょうか(笑)。若い人はお金ないしね。