神戸に、地元の老舗が考案し長年にわたり高い人気を集めている和菓子があります。梅雨時に鮮やかに色づく花、アジサイをイメージした「あじさい餅」です。
“映える和菓子”「あじさい餅」を手がけるのは、戦後まもない1953(昭和28)年に鈴蘭台で開業した「鈴音菓子(すずねがし) のぼり屋」です。
店主を務める野堀真也さんは3代目。あじさい餅の誕生秘話やこだわりについて、野堀さんに取材しました。
■森林植物園からの依頼が誕生のきっかけに
人気商品のあじさい餅ですが、のぼり屋の店頭では取り扱いがありません。購入できるのは、六甲山にある「神戸市立森林植物園」内の出店のみです。のぼり屋は、2008年頃から神戸市立森林植物園で菓子の販売を行っています。
あじさい餅は2013年に登場。今年で10年目となりました。じつは、元々お店にあったお菓子ではなく、森林植物園から「一年でもっともお客さんの多いアジサイか紅葉の季節にちなんだオリジナル商品をだせないか?」との依頼を受けて誕生したものだそう。毎年6月から7月初頭にかけて店に出され、今年は6月10日から毎週土日に販売。残すところ7月8日(土)9日(日)のみとなりました。
■“世界に一つ”の鮮やかなグラデーション
味や作り方、見た目はさくら餅に近いといいます。違いは、塩味がないところ。上品な味つけになるよう、砂糖を使わず、甘くなりすぎないよう心がけているとのことです。
鮮やかで目を引くあじさいの色は、食紅を使用した色粉でつけているのだそう。すべて手作業のためグラデーションに個体差があり、どれもが“世界で一つだけ”の色合いとなっています。
一般的に青色は「食欲を損なう」として避けられがちですが、あじさい餅は、赤色2つセットよりも、赤と、赤・青グラデーションをセットにしたほうがよく売れるのだとか。というのも、六甲のあじさいは“六甲ブルー”と呼ばれる青色がほとんど。そのため、より六甲らしいとして青色が人気なのだそうです。