神戸の老舗ベーカリー「ケルン」(本社=神戸市東灘区)の代表取締役・壷井豪さんが、このたび、ラジオ番組に出演。独自の取り組み「ツナグパン」について語りました。
「ケルン」といえば、言わずと知れた神戸の有名ベーカリー。1946(昭和21)年に創業し、御影にある本店をはじめ、神戸市内に直営8店舗を展開しています。ソフトフランスにミルクチョコをサンドした「チョコッぺ」のほか、「御影メロンパン」「クロワッサンベーグル」など、菓子パンから食パン、焼き菓子など幅広い商品を販売しています。
ケルンの3代目社長である壷井さんが大切にしているのが、地元・神戸との繋がり。さらに、パン作りと同時に社会課題の解決にも取り組んでおり、そのテーマのひとつが「食品ロス」だといいます。
食品ロスに取り組むようになったきっかけは自身の修行時代の経験にあるそうで、「パンを捨てることを“仕方ない”で終わらせたくない」と思うに至った出来事について語りました。
「修行先のオーナーは朝2時くらいからパンを仕込んでいて、閉店の時間になったら『もう捨てといてくれ』と言われる。そのオーナーには、『30年、家族と息子と朝ごはんを食べたこともないくらいこの仕事は大変やから覚悟しとけよ』と言われたんですね。仕事ってそういうもんだし、大変です。もちろんわかっています。だけれども、ちょっと違和感があったという。『(パンを捨てることは)仕方ないんだ』と言っていたけど、僕は諦められなかったんですよ」(壷井さん)
パンを作るうえで避けては通れない「売れ残りの廃棄」という課題は、環境問題だけでなく生産者の負担にもなっています。そこで、『捨てさせないことが心を豊かにし人生を幸せにする』を合言葉に、2021年よりケルン全店で「ツナグパン」の取り組みを開始しました。
「ツナグパン」とは、前の日に売れ残ったパンのなかから、傷みにくいパンを10~20個のアソートとして販売する取り組みです。
価格は定価の65パーセントほどで、購入者には100円相当の金券として使える木製の「エシカルコイン」をプレゼント。購入者に渡したエシカルコインと同じ額を、こどもホームやファミリーホーム、母子生活支援施設などの福祉施設にもプレゼントしているそうです。
金券として使われるエシカルコインは、神戸市の間伐材を加工して作られています。施設の子どもたちは、エシカルコインを持って自分でパンを買いに来ることができます。