持続可能性という言葉は、いまや社会全体のキーワードとなっています。地球温暖化や資源枯渇への危機感が高まるなか、日々の食卓に直結する「食料自給率の低さ」も深刻な課題として指摘されています。そうした中で注目を集めているのが「地産地消」という取り組みです。地域の食材を地域で消費することで、環境負荷の軽減や地元経済の活性化につながると期待されています。
兵庫県宍粟市(しそうし)に、そうした潮流を体現しようとしている飲食店があります。ラーメン店「星と月」です。代表の原田さんに話を聞きました。

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かつて海外で料理に携わっていた原田さんはコロナ禍を機に帰国。地域に根ざして「未来の子どもたちのために食の在り方を見直したい」と考え、開業に踏み切りました。現在はキッチンカーや出張料理にも手を広げ、地元の食をより多くの人に届けようとしています。
同店の麺は播磨産の小麦粉を100%使った自家製で、仕込みには地元の名水を用いています。スープは鶏ガラをベースに化学調味料に頼らず、素材そのものの力を引き出すことを大切にしているのだとか。ほかにも平飼いの鶏や卵・特別栽培の雑穀米・有機栽培の野菜など、店で使う食材の多くは近隣の生産者から仕入れています。いずれも手間を惜しまない農家の営みから生まれたものにこだわっているそう。

提供されるメニューの名は「月」「地球」「満月」といったユニークなものが並びますが、これは遊び心ではないと原田さん。月の満ち欠けが人間の体調や心のリズムに深く関わっていることに着想を得て「食を通じて体や命に向き合いたい」という真摯な思いを込めたものなのだと語りました。

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地産地消やサステナビリティは、ときに抽象的な理念として語られがちです。「地域の恵みを享受しながら食の未来を考える」という原田さんの活動は、地方だからこそ目指せるひとつの“モデルケース”なのかもしれません。
(取材・文=洲崎春花)
※ラジオ関西「谷五郎の笑って暮らそう」2025年8月24日放送分より





