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  • 2019年9月13日(金) 21時00分 社会・カルチャー

    「痛くない・被ばくしない」画期的な乳がん検査機を神戸から

     神戸大学数理データサイエンスセンターの木村次郎教授が創業した、株式会社Integral Geometry Science(本社:兵庫県神戸市、以下IGS社、新しい乳がん検査「マイクロ波マンモグラフィ」の実用化に向けた協業が始まったことを明らかにした。


    会見で検査機の説明をするIGS社の木村建次郎氏(写真:ラジオ関西)

     株式会社IGS社は神戸大学木村次郎教授と木村憲明博士によって2012年に設立した神戸大学発のスタートアップ企業で、このたび高精度かつ瞬時3次元画像を記録する「マイクロ波マンモグラフィ」のプロトタイプ機を世界で初めて開発し、その実用化に取り組んでいる。

     乳がん患者は年々増加しており、世界では年間約52万人、日本でも年間約1万4000人が乳がんで亡くなっている。

     現在乳がんの発見については超音波エコーやX線マンモグラフィを用いた検査が主流となっているが、検査において被ばくや痛みが伴うことや、受診が任意となっていることなど背景に、日本では約40%の受診率にとどまっている

     このたびIGS社が協業を開始した「マイクロ波マンモグラフィ」検査機は、そうした被ばくや痛みを伴わず高精度のデータを測定することができる画期的なもので、このマイクロ波での検査が全世界に普及すれば、乳がんで苦しむ多くの女性を救うことが期待される。


    「マイクロ波マンモグラフィ」のプロトタイプ機(写真:ラジオ関西)

     検査にはミクロンスケールの非常に薄いフィルムが用いられ、このフィルムを被検者の乳房に直接貼り、その上から検査機を当てていく。このフィルムは「乳房表面座標シール」といって、被検者の身体を保護すると同時に、乳房の表面を座標化する役割を担う

     これにより、より高精度な3次元データ測定することが可能となるだけでなく、検査データが座標として記録されるので、同じ位置での定点記録が可能となり、治療の経過を細かく観測することができる。

     また、X線では白く写ってしまうコラーゲン組織も、マイクロ波であれば透明となるため、より鮮明解析が可能となる。現段階では臨床研究のみだが、来年(2020年)以降は随時、治験われる予定で、早ければ2021年晩秋にも医療現場で実際に活用されることとなる

     IGS社の木村建次郎氏は会見で「この検査機は、造影剤がいらないことや無痛、無被ばくなど、多くの利点をもっている。乳がん検査の受診率を上げ、乳がんの早期発見につなげていきたいと展望を語った。

     また、乳房表面座標シール開発について協業合意した凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区)の前田幸夫取締役はマイクロ波マンモグラフィの実用化は、これまでの乳がん検診のあり方を大きく変えるものと信じている。乳がんに苦しむがいない世の中をつくるために、我々も貢献していきたい期待を述べた。(山本洋帆)