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  • 第31回 正木明さん(2019年8月)

    第31回のパーソナリティーインタビューは、『正木明の地球にいいこと』(毎週月曜 13:00~13:30放送)でパーソナリティーを務める、正木明さんにご登場いただきます!


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    地球環境を守るために役立つ知識や情報を発信し、リスナーと一緒に環境問題について考える『正木明の地球にいいこと』。この番組へ強い思いをもって臨んでいるのが、関西のお天気を30年にわたって見つめ続ける、気象予報士で防災士の、正木明さん。真摯に空と向き合ってきたなか、現代の地球環境問題への取り組みの重要性に着目する正木さんに、様々なお話を伺いました。

    普通に、まともに、一生懸命、わかりやすく、丁寧に伝えること。そこにこだわってやっています。

    正木さんにとってのラジオとの関わり、印象について。

    基本的には僕は音楽が、どちらかというと洋楽が好きで、音楽を聴くためにラジオをよく聴いていました。あとは仕事柄、短波放送で気象情報を聞きながら天気図を書くということを、若い頃はやっていました。ラジオはその印象が一番強いですね。

    天気予報など、気象関係のお仕事をされるきっかけは何だったのでしょうか。

    最初のきっかけがサーフィンでした。サーフィンは20歳にはじめて、自分で波を予想したり、サーフィン仲間もみんな自分たちで天気図とかテレビの天気予報とか見ながら、自分なりに「明日は波がいいよ」とか、「何時ごろがいいよ」とか(の情報を持っていて)、僕もその流れで天気図を見るようになったんです。ただ、そのときはあまりこれを仕事にしたいと思わなくて、趣味の一角だと思っていました。大学は理工系の学部で勉強して、そうこうするうちに、某企業に就職するとなったのですが、実際に入ってみてイメージと違うのもあって。実際なにが一番やりたいのか、改めて考えて、サーフィン好きだし、そこに関連するような仕事はないかなと思ったとき、「気象だな」と。民間の気象会社の求人を見つけて、そこで面接を受けて、「来たいんだったら来ないか」ということで転職して、そこがスタートです。

    それが、いまや正木さんの天職となっています。

    僕の生活を支えていただく、ひとつの大きな手段にいまやなっていまして、特にテレビで長寿番組(朝日放送『おはよう朝日です!』)にしっかりとつくことができて、本当にラッキーで、たまたま続けることができたので。

    関西のお天気情報の「顔」ともいえる正木さんですが、伝え手としての安心感、信頼感を強く抱かせていただいています。

    たぶん長くさせていただいているから、そういうふうに思っていただけるのかなと僕は思います。僕が(天気予報を)始めた頃、(視聴者が)学生さんになって、そこから大人になって、親になって、次の世代と一緒に見てくれてという流れがあり、そのなかで今は継続して(気象予報士の仕事を)できているのかなと思います。ただ、別に僕がこれをしたから続いているんだというのはまったくなくて。仕事が広がって、ラジオ関西さんにもお世話になって、講演活動もたまにさせていただいたりしているので、そういったところはラッキーかなと。

    それでも、正木さんのような気象予報士を目指す方もたくさんいらっしゃると思いますが。

    よく「正木さんみたいな天気キャスターになりたいんですが、どうしたらいいですか」と聞かれるんですが、そういう人たちになにかアドバイスをするとしたら、「とにかく、自分らしさを持つこと」ということ。「きっかけは人の真似でもいいと思うし、天気キャスターとしてのノウハウを学んで、そのあとが大事だと。例えば、カンテレの片平(敦)くん、(よみうりテレビの)蓬莱(大介)くんとかは、個性があっていろいろされている。あれを僕は真似できないし、片平くんみたいにダジャレばっかり言えないし……、それはともかく(笑)。じゃあ、正木明に何があるといえば、普通に、まともに、一生懸命、わかりやすく、丁寧に伝えること。それが一番の大きな僕の特長かなと思っていますし、そこにこだわって僕はやっています」というお話を、その人たちに向けては、僕はします。

    日本の天気予報は世界でもトップクラス。もっとうまく使ったら防災にもつながっていく。

    お天気キャスターとして活躍されているこの30年を振り返っても、天気の大きな変化を感じられるのでは?

    感じます。だいたい、梅雨や台風、大雪のシーズンなど、災害が起きやすいタイミングが毎年あるもの。そのときはそういう(天気予報の)体制をとるというのが、僕が天気予報をはじめた当初、10年~20年くらいにはあったかと思います。それが最近、徐々にそういう体制を取らなきゃいけない間でも、(大きな)災害を引き起こすような気象の現象が起きています。なおかつ、梅雨だったら今まで以上に雨量が多くなったり、台風では昨年の21号みたいに、来るとなったらすごい強い、10年ぶりの台風とか、そういうのがやってきたりする。その分、(天気予報はさらに)必要とされていると思うんです。

    天気予報も伝え方が変わってきていますか。

    昔は生活情報だったのが、最近はそれプラス、命を守る情報になっている。それを僕はすごく感じます。僕は気象予報士プラス防災士という資格をいただいていますが、その防災の知識も天気予報に盛り込まなければいけない。そういう僕なりの対応はしています。

    防災と天気はリンクしているということですよね。

    大雨が近いとき、何ミリくらい降るとか、このあたりで集中豪雨になりそうとか、そういう情報をただお伝えするのではなく、もしそうなったときやなるときに備えて、いまやるべきことは何かとか、避難の仕方とか、避難しなきゃいけないタイミングはこのあたりとか、防災情報もそうやってお伝えしないと、ちゃんと行動を起こすことはできないもの。そこはどんどん入れていかないといけません。

    今の天気予報は精度も高く、当たって当たり前という感覚でもあり、プレッシャーも感じられるのでは?

    ただ、元々、気象は「自然」なもの。もちろん100パーセントを目指すんですが、全部予測できたら、自然じゃないというか、僕たちが予測できないことを起こすのが自然だという大前提に立っていますので、予報が外れたときでも個人的なショックというのは別にないです。まだ予測しきれていないんだなというのはありますが。
    でも、天気予報を使う皆さんからしたら、「外れたじゃないか」となるじゃないですか。そういう人たちに対して、どういう対応を僕はとるかというと、ちゃんと説明させてもらうと。とりあえず「すいません」は言うのですが(苦笑)、なぜ外れたか、梅雨前線が予想以上に活発になったとか、前線の位置が近づいてきてしまったとか、外れた原因や、こういうことも起こり得るとできたら伝えたいと思ってやっています。「自然というのは予想外、想定外のことを起こす可能性があるので、そのときに備えてください」ということを。(予報が外れても)それをプラスに受け止めて、そういう(想定外のときの)情報を伝えるタイミングであると思うので。

    一方で、日本の天気予報の進化も感じます。

    それだけ天気予報を皆さんが信じていただいているということ。日本の天気予報は世界でもトップクラスで、アメリカとイギリスと日本が三大先進国。そのなかでも日本は、日本列島の狭いエリアのなかでも、すごい細かい予報を出すことができる。昨年の台風21号は、関西国際空港などをはじめ大きな被害をもたらしたが、予報では、24時間前には少なくとも完璧に、スピードも勢力もコースも予想できていたんです。皆さんにとっては、そうだったのとなるでしょうが、そこは僕たちの伝え方がまだ不十分なのと、ユーザー側がしっかりと受け止める体制になっていないのと、たぶん両方あったのかなと。これをうまくつなげていくのが僕たちの仕事であり、天気予報の使い方を皆さんに説明するのもすごく大事。そのあたりがしっかりしてくると、もともと精度の高い情報なので、うまく使ったらもっと防災につながると思うんです。

    地球環境問題は、一代で終わる話ではなく、次の世代、その次、孫の世代とか、どんどん続いていくもの。

    さて、天気、防災とリンクするところで、地球環境があります。そこで、自分たちにできることというのをテーマに地球環境を考える番組が、『正木明の地球にいいこと』ですが、天気を常々見ているからこそ、地球環境に対してアクションを起こそうという思いが日々強くなっているのでしょうか。

    そうですね。天気予報は自然を予測するものですが、自然が昔と違ってきて、地球の環境がどんどん変わってきてしまっているということがあります。大雨に対する防災と、環境保護とは、別物に見えて、むちゃくちゃリンクしているもの。天気予報は、大雨が何ミリくらいくるので備えてくださいなど、ある意味で対処法。でも、その大雨など(大きな天災)をなくす、減らすにはどうすればというところで考えていくのが、「環境問題」。地球温暖化が進むと集中豪雨が起きやすくなったり、台風が強いまま日本に来る傾向が強まっていて、これが実際に起きてしまっている。だから、僕たち気象を扱う人間も、できるだけ環境をもとに戻したいと強く思うんです。

    地球環境問題への意識をさらに強くしたときはいつでしょうか。

    特にその思いが強まったのは、娘ができたとき。そういう意識が上がったんですね。それまでは僕の人生、世代のことで頭がいっぱいだった。でも、子どもができた段階で環境問題を考えたら、一代で終わる話ではなく、次の世代、その次、孫の世代とか、どんどん続いていく。そういうふうに視野がむちゃくちゃ広がっていったんです。そして、娘が大人になったり、おばあちゃんになったときの環境を誰が責任をとるんだとなると、今の親である僕らじゃないかなと。「これはやらなあかんことがたくさんあるな」となって、環境問題にどんどん意識的に、積極的に取り組むようになりました。行動はまだそれほどできていないですが、いろいろ考えながら発信できるものは発信していきたいなと。その場のひとつが、『地球にいいこと』という番組です。

    正木さんのこの番組への思い入れも強いものがあるのでは。

    失礼ながら、ラジオ関西さんは関西圏だけのローカル枠で、30分の週1回の番組にすぎないですが、やっている番組の中身はすごい大事なものだと僕は思っています。環境問題に特化し、生活、暮らしと環境の関わりを扱う番組って、テレビでもそんなに見たことがないですし、ラジオでもそんなにないと思いますが、だからこそすごい意味もありますし、やりがいもあります。番組の価値というのもすごく高いし、高めなきゃいけないと思っています。そのなかで、スポンサーの(公財)ひょうご環境創造協会さんが頑張っていただき、イオンリテール(株)さんのお力添えもあり、続けることができています。

    6月末に行われたG20(金融・世界経済に関する首脳会合)大阪サミットでも、海洋プラスチック対策などの話も具体的にあがっていました。

    そうですよね。環境問題については皆さんの関心が今後、絶対に上がってくるし、上がってこなきゃいけない。そういう時代の流れになっているので。この前のG20でもペットボトルの話など進んでいましたが、そういった地球環境問題の先頭に立てればなというか、そういう意気込みでやっていますし、だからこそ、続けていきたい。ラジオ関西さんの番組ですが、いま、全国で聴くことができるし、タイムフリーでも聴くことができるもの。地球環境って関西だけでなく、日本列島全部だし、もっといったら世界規模のこと。環境を扱うならそれくらい広い視野でやらないといけない。そういう発信できる場をラジオ関西さんにいただけたというのは、これは絶対に大事にしなければいけないという意気込みでやっています。

    4月からスタートした番組での手ごたえはいかがでしょうか。

    まだまだ始めたばかりというか、完成には至っていないのが僕の印象です。今、素晴らしいゲストの方にも来ていただいて、いろんな情報を発信していただいていますが、そのお話をうまく僕なりに料理しながら、(ともに進行を務める)荻野恵美子さんと一緒に話をしながら、もっともっと充実させていきたい。最近では、ラジオだけでなく、SNSとかですぐ情報を発信できるじゃないですか。そういうのも駆使しながら、番組を拠点に、情報を発信できたらいいなと思っています。個人としては、今、天気予報のお仕事をさせていただいていますが、これからは環境問題のこともライフワークの1つとして、しっかりやっていければいいなと思っています。そして、実際に現場にいくという行動もこれからは増やせたらいいなと。今回『おは朝』で挑戦することになったキリマンジャロ登頂(8月23日に日本を出発)も、標高が5895mという、富士山よりもプラス2000mくらいあるところで、富士山も登ったことがない僕にとっては、むちゃくちゃ大きなチャレンジということになります。でも、そのキリマンジャロの頂上には氷河があるそうで、その氷河の規模が年々小さくなっていて、それがどうなっているかをこの目で見たいというのもあり、だからこそ、頂上には絶対にいかなければいけない。それもまったく他局のお話ですが、経験談として、この番組にも全部持ってきちゃおうかなと(笑)。もちろん、先方にはひとことはいっておきますが、それもできたらいいなと思っています。

    年々、環境問題については普段のニュースでも扱われ、SDGsの取り組みなども活発になってきていますが、周知はまだ足りないと感じられますか。

    今はSNSが発達し、ニュースサイトなども増えて、報道されない情報も、信ぴょう性は置いておいて、いろんな情報を見ることができますが、メディア批判というわけではないですが、あまり詳しくは発信できていないし、まだまだ足りないと思っています。たとえば、G20などの会議も行われているとはいえ、実際の自分たちの生活とはだいぶ離れているように感じられる方も多いかもしれません。その会議の結果、僕らの生活にどう関係あるのか、その辺をつなぐものがないような気がしていますので。そこが、僕たちの仕事。役割は大きいなと思います。大きな問題を身近な僕たちの生活にいかにつなげていくか。今の番組を聞いていただいたらなるべくそれがわかるようにしていきたいと思っています。