これだけ「県境に関係ない日常生活が存在」すると、都道府県をまたいでの移動の自粛が求められた際には「正直困った。すぐ近くの大阪のスーパーに買い物に行くから」「仕事は大阪だし、そこを規制されるのは疑問に思う」との声が聞かれた。日常生活に境界線を引くのはやはり難しいのではないか。
実際に県境を移動するには、「道」を通ることになる。摂津では兵庫と大阪の境は多くの道が通るが、但馬では山があり、ルートも限られる。「ヒョーゴスラビア」五国をそれぞれ回ったラジオパーソナリティ―・谷五郎さんと冨島隆則ディレクターは、「生活圏が重なっているところも多く、特に都市部では普段から県境を意識しているところは少なかったと感じた。その一方で、『ここは但馬』、『ここは丹波』と旧五国エリアを意識している人が多かった」と話す。
都道府県という行政区分は150年ほど前にできた。それまでは旧五国のように、またそれより以前はそれぞれの殿様が納めていた地域で分かれていた。BORDER=境界線は時代によって変わっていく。この先、都道府県ではない境界線ができるかもしれない。ただ、誰かが決めた境界線で区別するのではなく、お隣同士、お近く同士で協力していく。これに尽きるのではないだろうか。
今回の取材を通して、日々の暮らしの中では県境を意識していないことが見えた。しかし県境をはっきり示したものがあった。それは「谷五郎を知っているか」。兵庫県内はほぼ100パーセント知っていた。しかし、兵庫県の外、岡山県の一部を除いて「ほぼ知らん(笑)」(谷)。これも、今回の取材を通じて感じたBORDERだった。
※正確には「県境」ではなく「府県境」だが、いずれも「県境」と表記した。
※この記事は2020年12月27日放送、ラジオ関西制作『BORDER~ヒョーゴスラビアにおける県境とは』をもとに、再構成しました。
◆『BORDER~ヒョーゴスラビアにおける県境とは』アーカイブ記事
(1)淡路…淡路に「阿波踊り」の文化が残る地域も?!
(2)播磨…「備前」なのに、兵庫!?
(3)但馬…獅子舞と“ステッカー”がつないだ地元意識
(4)丹波…ライバル意識バチバチの兵庫と京都 でも“大河”では結束