姫路市香寺町の日本玩具博物館で「雛まつり~江戸と明治のお雛さま~」が4月11日まで開かれている。雛人形の魅力について、歴史を踏まえながら尾崎織女・学芸員に解説してもらう。4回シリーズの2回目となる今回は「京阪好み・江戸好み」の続編。
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●京阪型の「古今雛」も誕生
江戸で古今雛に人気が集まると、寛政年間(1789~1801)ごろには京阪製の雛人形が江戸では売れなくなってしまったというような事情もあったでしょうか。享保雛は、信州や東北地方へも数多く送られて今も地方の町々で大切に守られています。山形の紅花商人たちは、紅花を積んで京へ出かけた帰りに享保雛を買って故郷へ持ち帰りました。
一方、京阪地方では、新たに“京阪型”の古今雛が創作され、19世紀に入るころには、近畿圏で広く愛好されるところとなります。京阪型古今雛は、人形の頭も衣装のたたずまいも江戸とは異なり、従来の公家風の静かな表情を受け継いでいました。また、渋い色調の衣装を用いた江戸に対して、緋色や常磐色などの色調が好まれました。
●江戸好み・京阪好み
では、京阪の古今雛と江戸の古今雛の違いをご覧いただきましょう。
繰り返しになりますが、江戸の古今雛は、仏像彫刻にみられる“玉眼”(水晶や硝子などをはめ込んだ目)の手法が用いられて、明るい表情。背中が丸く、やや頭を前に傾けたなよやかな姿に着付けがなされています。一方、京阪地方においては従来の描き目で公家風の静かな表情が作られ、背筋を伸ばして凛とした姿です。違いがわかりやすいのは、女雛の袖口です。江戸の女雛は縫い取り(刺繍)がなされた長い袖のなかに両手を隠していますが、京阪の女雛は、袖口から手をのそかせ、檜扇を広げ持っています。皆さんはどちらのスタイルをお好みでしょうか。
【公式HP】
◆「雛まつり~江戸と明治のお雛さま~」 学芸員によるリモート・ミュージアム・トーク
(1)雛人形に見る「京阪好み」と「江戸好み」
(3)江戸は段飾り 京阪は御殿飾り
(4)雛道具に見る江戸と京阪の違い