阪神・淡路大震災の被災地の子どもたちへ、心のケアを目的に作家の故・藤本義一さんらが開設した芦屋市の「浜風の家」(2018年閉館)をめぐり、土地の契約方法に問題があったなどとして、藤本さんの妻・統紀子さん(86)らが兵庫県に計4700万円の損害賠償を求めた訴訟で、神戸地裁は請求を棄却した。3月26日付。原告側は即日控訴した。
藤本さんは「浜風の家」の設立呼びかけ人。芦屋市の県有地を活用して藤本さん側が県と賃貸契約を結び1999年に建設された。土地をめぐっては、藤本さんの理念に賛同した県が1998年5月から有償で、2004年4月からは無償で貸与。しかし県は「震災遺児のケアという当初の役割は果たした」などとして、期限までに建物を取り壊し土地を返還するよう求め、いったん閉館し建物は解体された。
その後、県による土地売却の入札で、統紀子さんが理事長だった運営法人は落札できず、神戸市内の社会福祉法人が落札した。
原告側は、▼県の担当部署がうその説明をして誤信させ、借地契約上の保護が受けられない契約を結ばせて借地借家法上認められた原告の権利(本来は30年間、土地を借りる権利があった)を放棄させた。▼すでに社会福祉法人との譲渡契約書を締結していたなどの違法行為があった、と主張していたが、判決で神戸地裁は「県の対応に違法な行為は認められない」とし、原告側の主張を退けた。
原告側は2019年2月、兵庫県による土地売却処分などについても違法であることの確認を求める住民訴訟を起こしている。
統紀子さんはラジオ関西の取材に対し、遺族感情として訴訟を起こしたのではなく、あくまでも土地の契約のあり方がおかしいとしたうえで「判決は県の主張を全面的に受け入れており、夫(故・藤本義一さん)がこれを目にすれば非常に怒るでしょう。そうした思いも込めて控訴に踏み切った」と話した。