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震災報道の記録 『被災放送局が伝えたもの』

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目 次

《1》は じ め に
《2》震災報道の検証
《3》震災直後の放送と取材活動の抄録
《4》その後の取材と震災報道の記録
《5》『あの日の私……』 社員の行動メモ
《6》各種関連資料
 (1) 震災時のAM神戸聴取状況調査
 (2) リスナー情報の分類
 (3) 震災ドキュメント
《7》写真資料
 (1) 震災直後の旧社屋の様子
 (2) 仮設社屋の様子

  • 《2》震災報道の検証 【8】管理面(バックアップ)からの総括

    【8】管理面(バックアップ)からの総括

    (1)地震発生時の状況
    (前述の通り)

    (2)地震発生後の指揮系統
    ●特別災害放送本部設置
    (前述の通り)
    ●災害対策本部設置
    1月18日全役員が揃い、緊急役員会開催。
    社長を本部長とする災害対策本部設置。
     ・社員の安否ならびに家屋の被災状況の掌握。
     ・社屋及び関連施設の被災状況の点検依頼。
     ・災害放送の期間の設定。
     (1/17 AM 6:00~1/20 AM 3:00 連続69時間)
     ・社員の身の安全確保及び放送継続のための緊急対策の検討。
     ・全壊した神戸営業局の事務所対策。
     ・災害義援金受付口座(さくら銀行)の開設と放送で募金の呼びかけを決定。
     ・被災社員への見舞金、臨時貸付金などについて決定。
    ●緊急避難対策
    ・スタジオ・事務所の本社屋からの緊急避難。
    本社ビルは建設会社の診断の結果、余震次第では危険な状況との判断で、本社屋東側にある当社所有の4階建てテナントビルにオンエアースタジオ及び災害報道本部、本社機能を移すことを決定。
    1月22日~23日引っ越しを実施し、1月24日より仮スタジオから放送を始める。
    ・鉄骨プレハブのシェルタースタジオ及びプレハブの仮事務所の建設。
    社屋の被災状況の掌握、危険度の確認を行うが、補修のメドが立たず、長期化する可能性が出てきたため、上記の緊急避難対策と並行して、当社所有の有料駐車場の一部に、鉄骨プレハブのシェルタースタジオ及びラジオマスター1棟及び2階建てプレハブ事務所1棟の建設を役員会決定し、1月19日広島の業者に発注。
    シェルタースタジオ‥‥1月25日工事着工、2月3日完成し、5日には機材を移設したが、スタジオの遮音が不完全のため、防音追加工事を行い、3月1日より放送開始。(シェルタースタジオ117と名付ける)
    プレハブ仮事務所‥‥‥2月8日工事着工、2月20日完成。
    23~24日引越を行い、本社機能を移す。

    (3)社員の被害状況
    地震後、直ちに総務より全社員の自宅へ電話による安否の問い合わせを行うが、電話回線の不通や被災して避難所へ避難した社員がいて連絡が取れず、全員の安否、家屋の被害状況が確認できたのは約1週間後であった。

    ●人的被害状況
    本社社員 役員4名および出向社員12名を含む当社社員98名、常勤アルバイトは死亡、重傷もなく全員無事。
    家屋の倒壊や家財の倒れで怪我人は数名いるが、いずれも軽傷で家族も無事。
    関連会社 関連2社には役員3名、社員12名がいるが、死亡もなく全員無事。
    ●社員の家屋被災状況(持家、借家含む)
    全壊 8人
    半壊 10人
    一部損傷 約30人

    (4)建造物・設備の被害状況
    ●本社々屋(罹災証明書では全壊)
    本社演奏所のある当社ビルは、住宅都市整備公団と区分所有のビルで、1~2階に当社演奏所および事務所・ホールがあり、3~12階が公団の市街地住宅となっている。
    地震による被害は深刻で、ビルの支柱や外壁に亀裂が走り、特にスタジオ・事務所のある2階はかなりのダメージを受け、非常に危険な状態となった。
    スタジオを囲む壁面は、コンクリートが大きくめくれたり、倒壊し、曲がった鉄骨・鉄筋がむきだしの状態。
    10■近いスタジオの防音ガラスは各所で割れ、レコード棚、書類ロッカーが倒れ、また、正面玄関ロータリーや駐車場、建物周辺の路面は陥没し、悲惨な状況となった。
    3階以上の公団住民には1月18日に避難勧告、1月23日には退去命令が出された。
    1月19日、当社でも、社員の身の安全確保と放送業務遂行のため、前記の通り、テナントビルへの緊急避難と駐車場内に仮スタジオ及び仮事務所の建設を役員会決定し、業者に発注。
    2月末には全ての移転が完了し、3月1日より仮設スタジオから放送を始めた。
    ●神戸営業局事務所(罹災証明書では全壊)
    神戸営業局事務所は昨年10月にJR三宮駅西口の交通センタービルから、同じ三宮駅中央口南の一等地にある神戸新聞会館へ移転したところだが、両ビルとも今回の地震で壊滅的な被害を受け、神戸新聞会館は取壊しが決まった。
    このため、神戸新聞社本体もハーバーランド内の日生ダイヤビルに移転が決まり、当社営業局も関連企業として同ビル内に入ることになり、1月25日移転完了。
    同日より営業活動を再開した。
    ●淡路送信所(一部損壊)
    当社の送信所は淡路島北端の津名郡淡路町岩屋にあったが、平成9年完成予定の明石海峡大橋による送信障害のため、送信所を同じ津名郡東浦町に移転することになり、昨年2月に新送信所建設工事に着工。
    11月に完成し、11月23日から新送信所に切り替えて本放送を開始しており、震源地に最も近く位置しながら、わが国初の自立式アンテナ2基、送信局舎、送信機器とも新しいこともあって、無傷で被害なし。
    ただ、液状化現象の影響で敷地内の地面が一部陥没、アンテナ周辺のフェンスが損傷を受けたが、不幸中の幸いというか、旧送信所の支線式アンテナ及び局舎は切り替え後ただちに解体撤去したため、アンテナ倒壊などによる付近民家への2次災害は免れた。

    (5)社員の勤務状況など
    ●出勤・通勤状況
    1月17日~18日は地震発生時に社内にいた社員(11名)の他、非常呼集で出勤した者ならびに比較的被害の少なかった市内の社員(約30名)が出勤し災害放送にあたる。
    また、出社できない者は自宅近辺の被災状況や避難所の状況、また地元自治体や警察、消防署で取材した情報を電話でリポートする。
    地震発生後、JR新幹線、在来線、阪急、阪神、神戸電鉄、山陽電車など全ての交通機関が完全ストップ。
    また、阪神高速道路高架橋の倒壊、国道、一般道路の陥没や、ビル、家屋の倒壊による道路閉鎖で、道路事情、交通事情が極端に悪化し、マイカー通勤が困難な状況となる。
    西は明石、東は尼崎、西宮からバイク、自転車、徒歩通勤など各々が個人で対応した。
    大阪在住の社員の中には、船で淡路島経由でかけつけた者もいる。
    JRは西から徐々に復旧回復し、1月23には西明石~須磨間が開通。
    1月25日にはJR芦屋~三宮間で代替バスが運行開始。
    また、1月27日からは東灘区青木まで阪神電車が復旧した。
    地震発生以降、社員の足の確保が最も困難で、1月23日以降は10人乗りの社用車を毎日2往復、三宮~本社間に、また2月1日からは阪神青木~本社間に送迎バスを走らせて対応した。
    ●勤務状況
    1月23日以降、JR西明石~須磨間の開通に伴い、西方向に在住の社員は出勤可能となるが、鉄道の復旧は長期化する見通しで、特に東から通勤している者は毎日出社が困難なため、1度出社すると2~3日会社に泊り込み、次の社員と交代して連休を取るなどの臨時の勤務ダイヤを組むように社内に指示を出す。
    営業部員は神戸営業局事務所が立入禁止のため、本社や通勤可能な大阪、姫路支社などに出社し、スポンサー、代理店との連絡や、聴取者からの安否情報の電話受けに当たる。
    総務局社員も数名ながら毎日出社し、ガレキの片付け、中継車の手配、社員の足の確保、食料や水の調達、車のガソリン、暖房用灯油、発電機の燃料の調達にあたった。
    また、電算機に損傷が無かったため、給与計算や放送進行表の作成作業にもあたった。
    1/17~1/31は臨時勤務体制とし、2月以降は順次通常勤務に戻す。
    自宅被災復旧等のため休んだ者については、原則として年休処理とし、年休残の無いものについては特休扱いとする。
    また、社が自宅待機を指示した者は、出勤扱いとした。
    ●重要書類などの管理
    地震発生後、余震の恐れがあるため、重要書類・資料・会社の実印などを被害の少なかった総務部長宅へ一時緊急避難。
    会社の実印、登記関係書類、株主関係資料リスト、株主総会記録
    取締役会議事録、他社との契約書・覚書社員の履歴など人事労務資料、給与台帳など賃金資料、決算関係資料などの財務資料、資産台帳、会社設立後の歴史的資料など。
    危険分散のため、財務・労務・営業の資料で電算機に入力しているデータの内、重要なものは、別のフロッピーにもうつす。
    ●食料・水の確保
    1月17日~20日の間は、市内のコンビニ・スーパーなど食料品店に市民が殺到し、調達不能となる。
    また、市内の道路は、陥没や家屋の倒壊で各所で寸断され、交通は麻痺状態となり、市内への食料品の補給、搬入ができず、流通は完全にストップ、大半の店が閉鎖。
    このため近隣の三木市や小野市まで食料調達に出向く。
    1月21日以降は、被害の少なかった社員や放送関係者、ゲスト、リスナーから次々と差し入れが届く。
    また、泊り込み社員以外は各自弁当持参で出勤するように指示を出す。
    水道・ガスは地震以後、完全にストップした。
    飲料水については、断水を免れた社員が出社時にポリタンクで水を運んでくれる。
    何より困ったのは、断水後の水洗便所の紙づまりで2ヶ所が使用不能になる。
    水洗用の水の確保が困難を極めた。
    社員が出勤時に、農業用水をトラックで運び、バケツで使用後流すという状況が続いた。
    ●宿直室・寝具の確保
    当社の平常時の宿泊勤務者は2名のため、普段から寝具は十分に確保していなかった。
    地震発生以降空調機が故障し、社内の暖房が完全に止まる。
    社内にある全ての電気ストーブ、灯油のストーブで暖をとる。
    また、災害放送のため毎日10数名が宿泊したため、宿直室のほか応接室や役員室を仮眠室とし、不足の毛布、布団等の寝具を調達したが、数が不足で社員に非常に寒い思いをさせた。
    発生後直ちに近所の旅館や国道南側の国民宿舎などに宿泊場所の提供を申し入れたが、各々被災していたり、避難場所になっており断られる。
    入浴については、1月21日以降、近くのホテルと交渉して、2週間にわたり、1部屋を確保。 番組ゲストの宿泊や社員の入浴が可能となる。
    ●電源の確保、中継車・発電機等の燃料確保。
    本社のある神戸市須磨区は平常時は電源事情が非常によく、停電は皆無に近い状況であった。
    また今回のような災害を想定し、受電系統は別ルートで2系統受電を行っていたが、震度7で全市停電ではなす術がなかった。(地震後30時間の停電は1回、20時間程度の停電が2回発生した。)
    非常用発電機の燃料タンクは 450リットルの容量で、地震時 350リットルが残っていた。
    約30時間は運転可能だが、ビル倒壊や火災の発生など2次災害が広まるに従い、停電復旧の目処が立たず、発電機の燃料が切れれば、放送もストップするといった状況の中、市内のガソリンスタンドはほとんどが閉鎖。
    発電機の燃料、暖房用灯油、中継車のガソリンを求めて、軽トラックで被災を免れた西へ向かい、やっと加古川市で燃料を確保できた。
    1月24日、近くのガソリンスタンドと交渉し、定期的な燃料補給と緊急時の優先的供給確保を図る。
    ●情報通信手段
    ・兵庫県が今回のような災害時の非常通信手段として、通信衛星を使った災害通信の情報ネットワークを約80億円かけて構築したが、基地局のある兵庫県庁が停電となり、また情報発信基地の発電機が故障し、システム全体が機能せず、端末局の当社にも情報が一切入って来なかったのは、今後に問題を残した。
    ・災害時に強いと言われている中波ラジオであるが、地震発生と同時にNTTの電話回線が、電話局の被災や停電及び電話の殺到で交換機がパンク状態となり、ほとんどが話し中の状態となる。
    このため、最も手軽な電話による情報収集がほとんど出来なかった。
    そんな中で電話リクエスト用に設置した7台の着信専用電話が生きており、リスナーから多数の情報が寄せられたことはありがたかった。
    さらに、専用線が一度も不通にならなかったことで、災害時には交換機を通らない回線が強いことがわかった。
    どちらにしても、災害時の情報伝達は無線しか無いと思っていた方がよい。

    (6)地震発生3ヶ月以降の対応
    ・5月2日、ハーバーランド内に建設中の情報センタービルに新社屋移転を社内決定。
    ・住宅都市整備公団との間で本社ビルの補強、補修工事開始について合意。
    工事開始に伴い、録音スタジオの確保が緊急課題となり、コンテナ型防音スタジオ2室を駐車場内に建設することを決定し、業者発注。
    6月20日完成、音声機材をセットし、稼働。
    ・同じく補修工事開始に伴い、3.4GHz帯STLの送信機及びパラボラアンテナの移設が発生。
    郵政省より緊急措置として期間限定で 67MHz帯への周波数移行が認められ、VHFアンテナを業者発注。
    67MHz帯STL送受信装置については、昨年送信所移転前に使用していた機器を再使用する。
    6月20日、STL変更検査合格、運用開始。
    社自体が『全壊』という被害を受けながら、被災地の地元ラジオ局としてマスコミの使命である災害報道を全うし、災害時に強いAMラジオを実証できた裏には幾多のラッキーがあった。

    (7)管理部門としての総括
    ・地震発生がウィークデーであったため、早朝にも関わらず生番組のスタッフが11名出社しており、午前6時には災害放送体制が組めた。
    ・交通機関ストップ、道路寸断の状況下にあって、当日正午の時点で31名の社員が出社し、被災現場の取材、安否情報の電話受け、放送設備の復旧や倒壊したコンクリート壁のガレキ処理にあたれた。
    ・社屋、放送設備が大きな被害を受けたなか、ハード面ではラジオの中枢であるマスター室と送出スタジオの被害が比較的軽微であったため、直ちに災害放送が開始できた。
    ・敷地内に当社所有の4階建テナントビルがあり、スタジオ及び本社機能を緊急避難できた。
    ・敷地内に仮設スタジオ、プレハブ事務所等を建設するスペース(駐車場)があった。
    また、地震の翌日に建設を決定し、即日業者発注したため、約1ヶ月後には移転できた。
    ・送信所を昨年11月に移転、中波アンテナを従来の支線式から自立式に変更し、送信局舎及び放送機器も新設したため、震源地にありながら無傷であった。
    また、移転後旧送信所の支線式アンテナ2基を直ちに解体撤去したため、アンテナ倒壊による付近民家への2次災害を免れた。

  • 《2》震災報道の検証 【9】管理部門(総務)の対応

    【9】管理部門(総務)の対応

    1月17日
    ・午前5時46分、早朝生ワイド『おはようラジオ朝一番』本番中に『震度7』の直下型大地震発生(震源地:淡路島北部)本社屋は壊滅的被害を受ける。
    番組スタッフは余震を避けるため、一時社外へ緊急避難する。
    ・午前5時50分、番組ディレクターより、総務部長宅へ緊急連絡が入る。
    ・午前6時00分の時報から自家発電にて放送再開。
    (放送中断は14分間)
    ・午前6時15分に出社した総務部長が、役員・社員に非常呼集をかける。
    ・午前7時30分出社した報道制作局幹部を中心に『特別災害報道本部』設置。(災害報道の方針、期間、取材体制、要員確保などについて検討)
    ・総務局員を中心に事務所、スタジオ周辺廊下のコンクリート壁倒壊によるガレキを撤去し、通路の確保にあたる。
    ・社員の安否確認。
    (電話回線は電話局自体の被災や電話の殺到で交換機がパンク状態となり、社員全員の安否が確認できたのは約1週間後である)
    ・代表電話にかかってくる市民、リスナーからの安否・災害情報などの電話受けにあたる。
    ・水、食料の確保。
    (特に食料については神戸市内で調達できず、三木市で確保)
    ・長時間の停電が予想され、非常用発電機、中継車、暖房用燃料の調達手配。(神戸市内のガソリンスタンドは閉鎖のため、翌日加古川市で燃料確保)
    ・社内での宿泊場所(役員室・応接室など)、寝具の確保。

    1月18日
    ・役員による『災害対策本部』設置、今後の緊急対策について決定。
    社員の安否、社屋等の被災状況の掌握、放送継続のための緊急対策、全壊した営業局事務所対策、被災社員への見舞金・特別貸付、義援金口座開設。
    ・電算機が無傷のため、給与振込のフロッピーを銀行へ持ち込む。
    給与25日支給を社内通達。(受取銀行の被災等で2~3日遅れもあった)
    ・昨年建設した新送信所の自立式中波アンテナ2基、送信局舎、放送機器の被災状況の点検を業者に依頼する。
    ・本社屋(A棟)・設備の被害状況の掌握。
    (社屋については建設会社に依頼)
    ・会社の実印、重要書類は被害の少なかった総務部長宅へ一時緊急避難する。
    ・宿泊者多数のため、宿泊場所として近くにある国民宿舎や旅館に場所提供を依頼するが、各々が被災していたり、避難場所になっていて断られる。
    ・水、食料の確保、社員の安否確認、ガレキの処理にあたる。

    1月19日
    ・敷地内の当社所有テナントビル(B棟)への緊急避難の検討、準備に入る。
    ・敷地内駐車場に仮設スタジオ及びラジオマスター(約50■)1棟と、2階建事務所プレハブ(約150■)1棟の建設を決定し、業者発注。
    ・倒れたレコード棚と散乱した約10万枚のCD・レコードの片付けと移動。
    ・空調機故障で暖房ストップ。 電気、灯油ストーブを調達。
    ・建設会社の診断で本社ビル(A棟)は危険な状態との判断が出る。

    1月20日
    ・スタジオ及び本社機能をテナントビル(B棟)へ移すことを決定(社内通達)
    ・三宮の神戸新聞会館にあった神戸営業局事務所が全壊のため、営業局事務所をハーバーランドへ移転することを決定。
    ・災害義援金口座をさくら銀行に開設、放送で募金を呼びかける。
    ・被災社員への見舞金、特別貸付について社内通達。

    1月21日
    ・近くのホテルと契約、2週間1部屋を確保。
    (番組ゲストの宿泊と社員の入浴が可能となる)
    ・食料確保が困難なため、泊り込み社員以外は弁当持参で出勤するように指示を出す。

    1月22日
    ・テナントビル(B棟)へ災害報道本部、本社機能を移す。
    (本社社員、営業局社員、番組アルバイトなどで引越し実施)1月23日
    ・本社屋で放送を行いながら、テナントビル(B棟)に送出スタジオ設営。
    ・加入電話回線、専用線の移設及び電算機端末装置の移設を行う。
    移設工事についてはNTT、電話業者とも被災しており対応できず。
    電算機本体、電話交換機は本社(A棟)に残し、総務・技術両職場でテナントビル(B棟)までケーブル延長を行う。
    ・三宮~本社間に送迎バス1日2往復運行開始。(社内通達)

    1月24日
    ・テナントビル(B棟)に設置した送出スタジオから放送を始める。
    ・昭和シェル石油のガソリンスタンドと交渉し、定期的な燃料の補給と緊急時の優先的燃料確保を図る。
    ・非常事態が長期化する見通しのため、各職場に臨時の勤務ダイヤを組み対応するように社内通達を出す。

    1月25日
    ・敷地内駐車場に仮設の鉄骨シェルタースタジオ建設工事着工。
    ・電源系統の移設工事打合せ及び発注。
    ・ハーバーランド内ダイヤニッセイビルに神戸営業局事務所を移し、営業活動を再開。

    1月27日
    ・JRは大阪~住吉間で開通、また、阪神電車も梅田~青木間で開通したため、送迎バスも青木~本社間に振り替え1日2往復運行。
    ・須磨区役所の罹災証明で本社屋は『全壊』。、B棟は『半壊』の判定が出る。

    2月3日
    ・仮設シェルタースタジオが駐車場内に完成。
    受電・発電系統の引込工事完了。
    空調、照明工事も完了。
    ・震災特別番組『兵庫県南部地震~放送現場からの証言~』2時間で生放送。

    2月5日
    ・仮設シェルタースタジオの副調整室に音声機器をセット、本社屋からラジオマスターの設備一式を移設したが、スタジオの遮音が不完全のため、再度防音工事の手直しを追加発注する。 放送はテナントビル(B棟)で継続。

    2月8日
    ・駐車場内シェルタースタジオ横に2階建プレハブの本社事務所建設に着工。

    2月17日
    ・震災1ヶ月特別番組『私にできること、あなたへの提言~いま始まるボランティア活動~』放送。

    2月20日
    ・プレハブの本社事務所完成。
    電源、空調、照明工事に入る。

    2月24日
    ・テナントビル(B棟)よりプレハブへ本社機能を移す。
    電算機本体及び電話交換機は本社屋(A棟)より、OA機器、机、椅子などはB棟より移す。

    2月28日
    ・仮設シェルタースタジオの防音工事完了、専用線等を移す。

    3月1日
    ・放送開始時より仮設シェルタースタジオに切替えて、本放送始める。
    『シェルタースタジオ117』と名付ける。

    3月2日
    ・仮設スタジオとプレハブ本社の中間に倉庫プレハブとトイレ発注し着工。

    3月17日
    ・震災2ヶ月特別番組『ファイト!神戸』放送。

    3月25日
    ・倉庫プレハブ完成。 レコード室、テープ編集室、資料室を移す。

    4月1日
    ・三宮地下街に『AM KOBE さんちかサテライトスタジオ』を開設し、放送を始める。

    4月3日
    ・新年度スタート。
    新入社員入社式、永年勤続表彰を行う。
    ・月~土の番組大改編、新番組『ラジオRAMDA』スタート。

    4月14日
    ・機構改革、人事異動発令。

    5月2日
    ・ハーバーランド内情報センタービルへ新社屋移転を社内決定。

    5月25日
    ・本社屋の補強・補修工事開始決定に伴い、録音スタジオの確保が緊急課題となり、コンテナ型スタジオ2室を駐車場内に建設することで業者発注。
    ・同じく補修工事開始に伴い、3.4GHz帯STL送信機及びパラボラアンテナの移設が発生。
    郵政省より緊急避難措置として期間限定で 67MHz帯への移行を認められる。
    VHFの送受信アンテナ発注。
    (送受信装置については、昨年送信所移転前に使用していた機器を使用)

    6月10日
    ・67MHz帯STLのアンテナ及び送受信装置を、本社と送信所に設置。

    6月20日
    ・STL変更検査合格、運用開始。
    ・録音スタジオ2室完成、音声器材をセットし稼働。

  • 《2》震災報道の検証 【10】被害状況

    【10】被害状況

    (1)被害内容の一覧 [被害場所] 被害内容
    [ラジオ関西 本社 須磨区行幸町]
     【本社々屋】罹災証明 『全壊』。
     ビル全体の外壁面に亀裂、タイル剥離
     正面玄関ロータリー・駐車場・建物周辺路面陥没
     (1階)
       ロビー・ホールの壁面亀裂、玄関ドア、窓ガラス破損
     (2階)
       ビル支柱に亀裂、スタジオ周辺のコンクリート壁倒壊
       スタジオ防音ドア・防音窓ガラス破損
       事務室・レコード室・応接・倉庫等ドア破損開閉不能
       事務室壁面亀裂、レコード棚が倒れレコード多数破損
       録音スタジオ1室使用不能
       放送設備・音声機器の多数が倒れ一部破損し使用不能
       OA機器、什器備品類多数破損し使用不能
     【付帯設備】
       上下水道管破裂、ガス管破損
       空調設備故障、空調配管ダクト破損

    [神戸営業局事務所神戸新聞会館 神戸新聞会館内]
     『全壊』で取り壊し決定
     被災後全面立入禁止のため電算機端末・OA機器・什器備品類一切搬出不能(滅失)

    [淡路送信所]
     液状化現象により敷地内地面亀裂、一部陥没
     中波送信アンテナ周辺防護フェンス一部破損

    [当社関連企業ビル 本社敷地内]
     【レストインスマ】罹災証明 『半壊』
     上下水道管破損、ガス管破損
     屋根鉄骨一部破損、ビル壁面・階段亀裂
     空調用クーリングタワー破損、エレベーター故障

    (2)復旧状況 [項目] 復旧状況
    [ラジオ関西本社屋]
    (本社屋復旧状況)
     本社屋は住宅都市整備公団と区分所有の12階建てビル。
     被災後、1月24日から放送スタジオ及び本社機能を敷地内の当社関連企業ビル内に移し、放送継続。
     また、被災直後から駐車場内で建設にかかった仮設スタジオ・仮事務所などプレハブ3棟が2月末に完成、放送機器等を再度移設して3月1日より放送を始める。
     4月末に本社ビルを補強、補修して復旧を図ることで住宅公団と合意。5月以降3階以上の住宅部分から補修工事に着工。
    (付帯設備・放送設備・什器備品の復旧状況)
     上下水道・ガスは8月までに修理予定。 空調設備は修理凍結。
     コンテナ型録音スタジオ2室を敷地内に建設放送機器、什器備品は一部修理、その他は買い替え。

    [神戸営業局事務所]
     ハーバーランド内ダイヤニッセイビルに事務所を移し、1月25日より営業活動を再開。事務機器、什器備品は買いそろえる。

    [淡路送信所]
     敷地内地面の陥没は整地予定。
     中波アンテナ周辺フェンスも修理予定。

    [当社関連企業ビル]
     【レストインスマ】は4階建てのテナントビル。
     4月初旬には上下水道、ガス管の破損修理は完了、営業再開。
     ビル壁面・階段の亀裂は現在補修工事中。
     エレベーター及び空調用クーリングタワーは修理時期未定。

  • 《2》震災報道の検証 【11】今後の課題

    【11】今後の課題

    今回のような大災害の場合、被災者のラジオへの情報依存度は極めて高い。
    それは、停電や通信手段の壊滅、交通網の途絶といった最悪の状況のもとで人々は唯一の情報源としてラジオを拠りどころとするからである。
    このことから、被災地のラジオ局は、何をおいても、地域の人々の災害時のさまざまな情報ニーズに応えるための万全の体制をとり、人々の不安を取りのぞく安心報道を展開することだと言える。
    今回のAM神戸の災害報道が地域に支えられたものであり、市民ラジオとして機能した教訓から、今後の私達の課題は、日常の放送活動の中で、地域にさらに密着し、防災意識を高め、万一に備える体制をつくることにある。
    地域の人たちのいのちと暮らしを守る、あわせて、社員のいのちを守ることを大命題として、今後の大災害報道マニュアルつくりのための点検を行わねばならない。
    その際の検討課題として以下のものが考えられる。

    (1)社全体
    最小人員の下でも初動体制がとれるシステム。
    社員への連絡手段・非常呼集方法。
    人員確保、特に徒歩で出社可能な社員の確保。
    災害時の配置、任務の明確化と事前確認。
    災害放送維持・継続のためのバックアップ・サポート体制。
    ハード面でどこまでバックアップを設備しておくかの検討、また防災用の諸設備、機能 の充実。
    重要書類などの危険分散。(F.Dによる分散管理)
    災害時の社員全員記者化の確認。
    個人判断でない災害時の行動基準の設定。

    (2)報道実施面
    電話ライン寸断の事態を想定し、行政、防災、ライフライン各機関との確実な連絡システム。
    共同通信回線の断線の事態に備えた補完措置。
    指揮系統の明確化、役割分担の明確化。
    全体に方針や状況を把握し易くするための措置。
    AMラジオとしての災害報道方針と基本的報道姿勢の確認。
    情報入手方法、連絡ルートの再構築。
    安否・生活情報など災害時の情報の編集方針の策定、及び整理・保存方針の策定。
    リスナーとの対応(問い合わせ・苦情)体制。
    緊急時の連絡システムの確立、及び人員配置・役務分担の明確化。
    早朝・夜間の報道体制。
    情報センターを中心とした集団報道、取材体制。
    取材マニュアルの作成。
    取材・レポート能力のある記者の育成。
    取材面でのバックアップ、ニュース源の確保などの面からニュースネットワークへの加 盟の検討。
    本社と出先との連絡体制。
    中継器材の整備と保管。

    (3)ハード面
    放送用・連絡用のナローバンドチャンネルや中継用のワイドバンドチャンネルの割り当て増。
    パーソナル無線の活用
    兵庫県の防災無線(CS)の活用
    NTT衛星回線の利用
    ラジオ局へのEPUの使用認可。
    最悪の事態を想定した技術的シュミレーション。

    ●演奏所
     ・オンエアスタジオが使用不能
      他のスタジオに切り換える
     ・スタジオ切り替えのAPSが動作しない
      スタジオ出力をSTLに直結(マスター) スタジオとSTL直結
     ・他のスタジオもまったく使えない
      臨時コンソールを組む。 中継車を臨時スタジオに転用する
     ・中継機能に障害
      ハイブリッド-他のスタジオのハイブリッド 可搬ハイブリッド
      NTT回線の直結
      中継アンテナ-臨時設置
      無線受信機-予備機材の利用 連絡無線機の転用
      専用線の障害-
    ●演奏所~送信所間の回線
     ・パラボラが倒壊、または傾いて使用できない
      予備回線の活用(INS、専用線)中継用無線機の活用
     ・STL装置の故障
      中継用無線機の活用、予備回線の活用
     ・リモコン不能
      有線での予備系統
     ・最悪の場合、送信所から直接オンエア
      マイク、アンプ、連絡方法、情報伝達方法、要員派遣
    ●送信所
     ・アンテナの倒壊
      アンテナ1本での放送(通常は2基)
      大型クレーン車による臨時アンテナの設置
      車輌手配、組立、アンテナ整合などの問題
     ・同軸ケーブルの切断
      予備ケーブルを設備に置く
     ・放送機の故障
      可搬放送機で小電力でも放送
     ・送信所派遣要員の足の確保
      フェリー運休時の船の確保
      単車、自転車での送信所行き
    ●その他
     ・停電
      非常エンジンの不起動 手動起動の方法
      冷却装置、冷却水の確保
      燃料の確保 開店しているスタンド、配達方法
     ・人員
      非常時の自動出勤体制
      呼出体制

    (4)営業面
    CM休止・中止広告主の早期復帰への手立て
    被災広告主の減少に伴う、新規広告主の開拓
    市場変動に伴う営業部員の再配置
    中止イベントに代わる新規事業の企画・立案

    (5)地域、他局
    局別情報分担の可能性の検討など、近隣AM局との協力体制。
    国際都市の地元局としての外人向け報道の検討。
    地域リスナー ネットワーク作り。
    地域防災計画でのラジオの役割の明確化。
    行政サイドからの積極的情報提供とラジオ情報の行政サイドの積極利用の働きかけ。

    (6)番組編成
    災害時における番組取扱い基準の見直し。
    継続的震災フォローのための番組編成と体制づくり。
    防災面を意識した継続性のある番組編成。

    (7)その他
    CD、レコード棚の固定・強化。
    取材班の身を守るヘルメット、ゴーグル、手袋等の整備。
    携帯電話の活用。
    ラジオ、及びマニュアルの常時携帯。

  • 《3》震災直後の放送と取材活動の抄録 ①

    《3》震災直後の放送と取材活動の抄録

    [阪神大震災 AM神戸の緊急放送ドキュメント]

    ※これは、当時の同時録音テープをもとに、放送を時系列で整理したものです。
    社の同録装置が地震で壊れたため、一部外部のエアチェックのテープを利用しています。
    しかし、17、18、19、一部20日の放送の内、同録テープでの採録が不可能な時間が、おそよ9時間分あります。
    ご了承ください。

    1月17日(火)

    ・午前05時30分
    「おはようラジオ朝一番」 ナマ放送スタート。パーソナリティは、月・火曜日担当の能崎まゆみ
    ・40分
    「スポーツ朝一番」 のコーナーで、ヨットのアメリカズカップの話題などを紹介。
    続いて、「お目覚め体操朝一番」 にうつる。
    テープで、担当の野村健一郎氏の“寝たままできるエクササイズ”が流れる。
    『~はい、それじゃあ右手からいきます。
    ゆっくり右手だけを持ち上げて、天井です。
    通過して、頭の上にのばします。
    はい、今度は持ち上げて………』
    ・46分
    同55秒に、地震のため、放送が停止(正確には、電波に音声がのらない無変調状態)する。
    以後、放送停止は、13分05秒間続く。
    社屋とスタジオの損壊が大きく、社屋内は停電、天井から水漏れ。
    報道制作局等が入る大部屋の机や本棚全てが倒れ、コンクリート壁も大きく崩落、砂ぼこり。
    主調整室と副調整室の機材もほとんどが横倒しとなる。
    奇跡的に、オンエアスタジオだけが、防音ガラス等の損壊少なく、余震での
    建物倒壊の危険を感じながら、ここから1週間に及ぶ震災報道を行う。
    朝ワイドのスタッフら、11人は、2人を残して、外へ避難。
    この内、一人のアルバイト女性スタッフが、レコード室で倒れてきたラックで頭を打ち、負傷。応急処置のあと、帰宅する。
    残りのスタッフは、周辺の取材と、近隣の住民の誘導等に当たる。
    技術スタッフが、放送復旧のための点検作業に入る。
    淡路島のアンテナの無事と、本社放送施設が、緊急の処置で、何とか放送可能な状態が確認される。
    自家発電装置を起動。
    ・午前06時00分 ◎
    6時の時報入る。
    6時半からスタートする 「まーるい地球と……谷五郎モーニング」 のアシスタント藤原正美がスタジオから放送再開。
    雑音まじりの電波で、阪神大震災の震災放送がスタートした。
    藤原『……しゃべりましょうか?……はい。
    AM神戸のスタジオです。
    スタジオが、現在、ただいまの地震で壊れております。
    音声がとぎれております。情報が入り次第お伝えします。……
    こちらは、AM神戸558です。
    ただいまの地震のため、オンエアが途絶えております。
    情報が入り次第お伝えしてまいります。
    ……どうぞ、皆さんも落ちついて、火の元を点検なさって。
    ……神戸の須磨のスタジオは、壁が崩れ、本棚が倒れ、机の上のものが散乱した状態になっております。
    少しガス臭い気配もしますが、どうぞ皆様、落ちついてガスの元栓などを確認なさって、火の元も確認なさって、落ちついて行動なさってください。
    (激しい息づかいとともに、かろうじて放送再開。藤原に、担当の丸山Dがトークバックで、しゃべる内容をひとつひとつ指示しながらの放送)
    ・06分
    (外へ避難し、周囲を取材してきた谷パーソナリティが、スタジオに戻り、藤原と一緒にしゃべりはじめる)
    谷『えー、僕も外から帰ってきたんですけれども、AM神戸の周りのマンションのブロックも崩れてまして、住民の方々が不安げに外に出てきておられました。
    まだ真っ暗という状況で、マンションの崩れかけた部屋に閉じこめられた方もおられるようですが、脱出の方法がまだ見あたらないようで、とりあえずは部屋の中におられる………そんな方もおられるようです。
    とにかく、AM神戸の中は、壁も崩れまして、建物もほとんどが倒れ、2階3階ですか、からの天井から水も漏れてきましたが、放送は一応できる状態に復旧したようです……
    藤原『はい、外に出てみましたけれど、壁が崩れましが砂ぼこりなどが舞い上がっておりまして、夜明け前ですので電気も全部消えているという状態なんです。
    真っ暗な中で不安げな住民の方が皆さん外にでていらっしゃるような状況なんです。
    とにかく、火の元が気になるんですけれども、ちょっとガス臭いにおいもスタジオまで来ておりますけれども……
    ・10分
    神戸市長田区に住む三上アナが電話をかけてくる。
    直ちに、スタジオと結び、レポートを入れようとするがスタジオの回線不良でつながらない。
    ・13分
    かろうじて一回線だけが生きていた共同通信の記事ファックスで、ようやく地震情報が入ってくる。
    しかし、神戸の震度は入らず、姫路・大阪が震度4の中震と放送。
    ・14分
    三上アナの電話による報告で、長田地区の火災発生の状況が判明。
    このあと、繰り返し、各地の震度などを谷・藤原の両名が伝える。
    ・17分
    社員や関係者に、電話で被災状況のレポートをするよう要請の放送。 
    ・18分
    朝ワイドレポーターの旭堂南海(東大阪市在住)から電話はいる。
    大阪でもかなりひどい揺れであったとの報告。
    ・20分
    放送中にスタジオで地震にあった能崎がスタジオに復帰。
    その瞬間の模様などをレポート。
    ・22分
    神戸須磨区に住む岩崎アナが車で出社、スタジオへ。
    ここで、はじめてニュース形式の地震原稿を岩崎アナが読む。
    続いて、周辺の状況と、自宅から社までの被害の模様を報告。
    震源地は、淡路の先端らしいと放送。
    福井、鳥取、松江など広範囲に強い揺れの大規模地震らしいことが徐々に判ってくる。
    ・26分
    震源地近くの垂水区に住む国広アナから電話入る。
    自宅周辺の状況を報告。
    ・28分
    余震が頻繁におきる。
    ・30分
    藤原が、月見山駅周辺まで歩いて取材。
    家屋倒壊多数、生き埋め多数 。
    その模様をしゃべる。
    ・36分
    長田、兵庫区で家屋の倒壊が多数という情報が入る。
    ・39分
    岩崎アナらが、被災地の人たちに、広い場所に避難するよう呼びかけ。
    また、出勤途中だった社員からの報告で、JR各線や、大阪の地下鉄や環状線、新幹線など、交通機関が不通の情報はいる。
    この時点では、崩落した阪神高速道路神戸線の被害はまだ不明のまま。
    大きく損壊したAM神戸の社屋の内部の様子を報告。
    ・41分
    地震の被害が広範囲に及び、規模はマグニチュード7. 2、震度6の烈震が神戸であるとの情報がはじめて入る。
    全国各地の震度などを放送。
    規模の大きさが徐々に判明。
    ・43分
    近畿各地の交通機関の不通状態を繰り返し放送。
    (同録装置損壊のため、以後の分のテープなし。採録不能)
    (午前7時前には、長田区日吉町から、ラジオカーの現地レポート第一回が入る。その時のテープが現存せず、採録不可能)
    ・午前07時18分
    スタジオでは、長田・兵庫区内での家屋の損壊や地割れなどについて報告が続いている。
    ・21分
    ラジオカーで長田区方面へ出かけた三枝記者とつながる。
    三枝『はいはい、聞こえますか?私はすこし移動しまして、長田区の若松町、
    若松町11丁目の火事現場の目の前にきています。
    時折、小さな爆発が起きてですね、10丁目あたりから、順に西へ大きく広がっておりまして、私のすぐ目の前、およそですね、200メートルぐらい全部火に包まれております。
    ただ、消防車は、まったく一台も来ておりません。
    火災です。大火災の状況です。
    このままいきますと、あたりが倒壊した家屋、木造家屋ばかりですので、延焼が避けられない状況です。
    ・26分
    このあと、三枝記者は、目の前で、家の下敷きになった息子を延焼の炎の中に残して見殺しにせざるをえなかった住民のインタビューを現場中継。

    三枝『……それからすぐ近くにこちらの住民の方で、手に大けがをされているかたがいらしゃるんですが、これどうしてけがされたんですか
    住民『ガラスで…
    三枝『ガラスが割れて?おけがはそれだけですか?
    住民『手だけやね
    三枝『そうですか……この火事はいつ頃からでたんですか?
    住民『これ、どんなんやろ……地震が揺れだして間なしやからもう、ちょうど10丁目のその角の家から2軒目のその裏の裏から新しいけどね、そこら近辺から火の手が上がって、私の家は全焼してしもたけどね。
    三枝『全焼したんですか?どこらへんですか?
    住民『10丁目です
    三枝『10丁目ですか。で、家族の方は?
    住民『息子が一人、もう死んでと思うね。下敷きになって、出されんかったですわ。
    三枝『息子さん?何歳?
    住民『38歳か……
    三枝『まだ安否がわからない?
    住民『もう焼けたから、もう死んだと思いますわ………
    三枝『はー………谷さん
    住民『もうちょっとね………足が出てるんやけど、あとがでなかった………
    それに………
    三枝『お父さんは足までつかんで息子さんを引っぱり出そうとしたけれど、なにかの下敷きになったんですか
    住民『そうそう、その内に火が来たもんやから、“おやじ、逃げてくれー、言うて………
    三枝『息子さんがそうおっしゃった、はーっ、そのままで
    住民『目の前で見殺しですわ、だから、この火事さえなければ助かったんやけど
    三枝『そうですか………谷さん、という状況でしてね、とにかく、なんとも表現の出来ない状況が目のあたりです。
    すぐ10メートル先で火は燃えさかっておりますので、このままでいきますと、長田の若松町界隈は、きわめて悲惨な状況になるのではないかと思われます。
    まだ消防車は一台も来ておりません。
    谷『まだ来てませんか………

    その内容は、スタジオと聴取者に、被害のすごさとむごさを伝えた。
    この現場レポート以後、17日と18日の両日のラジオカーチームは被災した人々のレスキュー報道を、データを中心に行うこととなる。
    被災した人たちにマイクを突きつけることは避けた。
    激甚被災地へ入ったラジオカーチームは、このあと、長田区若松町一帯を、中継器を肩に徒歩で移動し、丁目番地などのデータを中心にした“SOS放送”を断続的に行う。
    10階建てのマンションの踊り場から、真下の火の手の拡大状況と、避難を呼びかける放送を行い、現場から退避した。
    (以後、同録テープがなく、約40分間は、採録不可能)
    ・午前8時10分
    阪神高速神戸線の橋脚のコンクリート柱が大きく損壊しているとの情報を伝える。
    この時点では、東灘区の阪神高速高架の倒壊の情報はまだ入っていない。
    ・12分
    JR須磨駅周辺のの被災状況を、取材した社員が報告。
    ・13分
    震源地近くの明石海峡方面に向かうラジオカーからのレポート。JR垂水駅前でガス漏れがあり、通行止めとなっており、国道2号線が渋滞しているとの報告。
    ラジオカーから、ガスも元栓を閉めて避難するよう繰り返し放送。
    ・16分
    東灘区深江で、阪神高速の高架が倒壊したとの目撃情報を放送。
    その他、神戸・大阪の交通関係の情報を放送。
    ・18分
    スクーターで取材中の谷部ディレクターが、神戸兵庫区の道路の陥没や、水道管の破裂などの様子を現地からナマレポート。
    道路の陥没現場には、自動車が落ち込んでいると報告。
    ・22分
    神戸市灘区六甲町で、大規模火災が発生し、住民は六甲小学校に避難していると放送。
    西宮消防局の情報として、市内で多数の家屋倒壊が発生、生き埋め多数。
    芦屋警察署からの情報、市内72ヶ所で建物倒壊、200人以上が生き埋めになっている。
    ・28分
    安否情報 16件分伝える。
    ・31分
    須磨区の自宅から山本和子ディレクターが出社、スタジオで状況報告。
    交通渋滞のため、回り道をしたが、動かないため、垂水の塩屋付近で車を乗り捨てて、徒歩。
    スキーバックに身のまわりのものを詰めて避難する人たち。
    ・34分
    震源地へ向かっていたラジオカーの三枝記者から報告。
    垂水駅前で、ガス爆発があった模様。(後日、垂水ではなく塩屋と判明)
    このため、国道2号線は上下線とも通行止めになっている。
    コンビニエンスストアの前には長い行列。
    食料品や電池を買い求める人たち。
    藤原アナが、これまでに入った被害状況をまとめて伝える。
    街にスクーターで取材に出た谷部ディレクターからの報告では、兵庫区の大開通りでは、道路の半分が大きく陥没して、水道管も破裂、車が落ち込んでいるとの報告。
    灘区の六甲町では、大きな火災が発生している。
    西宮や芦屋での倒壊家屋の下敷きになった人たちが多数救助をまっているとの放送。
    安否情報 16件
    ・39分
    神戸新聞淡路総局に電話がつながる。
    総局デスクに震源に近い淡路の被害の状況を聞く。
    この時点で死者2人を確認、一宮町、北淡町、津名町での被害が大きいとの情報。
    火事の発生は、少ないとの情報。
    安否情報 12件
    ・43分
    阪神高速高架の倒壊の詳細入り、ニュースとして繰り返し放送。
    ・46分
    南海電車が関西新空港の連絡橋上で立ち往生し、乗客が閉じこめられているとの情報。
    この他、神戸中央区のビルの倒壊の状況を放送。
    ・48分 ◎
    安否情報 6件
    地震から3時間経過。
    スタジオキャスターが、『太陽がはっきり見えないほど、外は、一面くすんで見える、夜明け前の空の状況だ』と報告する。
    安否情報の続報6件
    安否情報の受付電話番号を繰り返し放送する。
    また、その受付の内容や、趣旨も放送する。
    安否情報 続報15件
    ・午前09時00分の時報 ◎
    スクーターで取材中の谷部Dとようやく電話がつながる。
    兵庫区の湊川周辺の被災の状況や、JR鷹取駅近くの火災の状況、新開地の家屋倒壊の状況などを現場レポート。
    火事の多発で、消火がまったく追いつかず、住民がホースで消火している状況を報告。
    ・03分
    安否情報 14件伝える。
    ・05分 ◎
    淡路島の北淡町役場の情報として、同町の被災の状況を放送。
    ・07分
    神戸中央区の兵庫県警生田警察署に到着し、取材した三浦アナと電話がつながる。
    生田署が停電していること。
    神戸市内での確認された死者数が、須磨2人、有馬1人など合わせて8人であることを伝える。
    阪神高速神戸線の橋脚倒壊や、阪神高速湾岸線の西宮大橋の落下、JRの脱線事故などの情報を報告。
    須磨の本社から、三宮への道路沿いの被災状況を、順に報告。
    市民の目撃情報として、県庁南のレンガ造りの栄光教会が倒壊している旨放送。
    ・10分
    さらに、今入った情報だとして、阪神電車が大石駅と新在家駅間で転覆して、多数の乗客が閉じこめれているとの情報を伝える。
    ・14分
    神戸市垂水区の男性リスナーからの電話での情報。
    この方の自宅周辺の状況を伝える。
    垂水区のこの地区の停電は復旧したとのこと。
    ・16分
    安否情報 25件放送
    ・20分
    JR西日本の情報として、新幹線の橋桁が、明石から大阪間で少なくとも5ヶ所落下していると放送。
    安否情報 13件
    ・24分 ◎
    地震関連の情報とニュースをまとめて放送地震発生から、3時間半あまり経過。
    ・28分
    安否情報 12件
    近くの広い場所にすぐに避難するよう繰り返しよびかける。
    この頃、震度3クラスの余震が続く。
    ・30分
    道路が各地で分断、緊急自動車が通れない状況だと放送。
    午前9時現在の県下の死者は17人と県警が発表。
    各地の震度放送。
    マグニチュード7.2。
    神戸と洲本が震度6の烈震。
    安否情報 2件
    ・33分
    震度の深さ、約20キロと判明。
    交通関係の不通の情報をまとめて放送する。
    ・35分 ◎
    安否情報 7件
    ・37分
    余震が頻発している。
    火災防止にガス対策と火の気を使わないようにとスタジオから何度も呼びかけ。
    地震による被害は、想像以上であることが徐々に判明していく。
    安否情報 12件
    ・39分
    屋外へ避難した人たちへ、近くの公園や学校に避難するよう呼びかけ。
    余震への対策を放送。
    安否情報の電話番号を放送。
    安否情報 9件
    スタジオまで、火事の臭気が入り込んできている旨放送。
    この時点でも、AM神戸は、停電、自家発電による放送継続中。
    アースの加減か、マイクのスイッチをいれると、ムーンというハムがのる状態での放送。
    車での避難は避けるように呼びかけ、公園や学校への避難を呼びかけを繰り返す。
    ・41分
    地震の震源地が北緯34. 6度、東経135度と正式に発表される。
    県警情報として、午前9時現在の地震による死者が17人と発表される。
    安否情報 2件
    指定されている避難場所にこだわらず、安全と思われる場所へ避難するよう呼びかけ。
    余震がつづいているため、落ちついて行動するよう呼びかけ繰り返す。
    ・43分
    スタジオの谷パーソナリティらが、地図で、震源地を確かめる。
    神戸は、直下型地震に直撃されたようだと放送する。
    神戸市内の陸の交通機関は壊滅状態だと放送。
    安否情報 7件
    安否情報 3件
    神戸市内で、倒壊した建物で350人が下敷きになっているとの情報を放送。
    45ヶ所でガス漏れも発生しているとのこと。
    ・45分
    震源地の明石方面へ移動中のラジオカーからの報告海峡大橋は無事。
    国道2号線は、ガス漏れの規制のために長い渋滞垂水界隈の被災状況は、長田周辺に比べて軽微。
    コンビニエンスストアには、長い列が出来ている。
    このレポートで、被害は、須磨より東に集中しているとの判断が出来た。
    安否情報 5件