【4-A】放送内容、情報について
(1)災害後の放送方針
地域ラジオの使命は、被災地の情報、特に災害状況、住民の安否の状況、さらに生活情報を可能な限り克明に報道することである。
それによって、その使命は果たせると考えた。
(2)災害後の番組構成
放送は、地震直後午前5時46分に中断、その後6時の時報とともに再開され、1月20日午前3時までの69時間、CM無しの震災報道を続けた。
20日午前5時の放送開始から基本的にレギュラー枠で、またCMも復活させたが、内容はワイド番組を中心に殆ど震災情報一色になり、CMもスポンサーの辞退で通常の1/3程度に減少する。
21日(土)、22日(日)も中央競馬実況中継が中止になり、それに代わって震災情報を放送するなど内容変更が相次いだ。
通常の番組編成に戻るのは28日(土)に中央競馬中継が再開されてからになる。
それ以後も各ワイド番組は震災関係の情報が中心になって構成された。
そして、被災地の変化に対応して、放送内容も災害報道から徐々に生活情報に重点を移していった。
(3)震災特別放送の内容
放送面では、午前5時30分からの早朝ナマ番組『おはようラジオ朝一番』の放送中、午前5時46分に地震発生。
同時に停電し音声が中断した。
在社スタッフの努力で放送を再開したのは午前6時であった。
(音声中断13分05秒)
第一声は谷五郎モーニングのパートナー藤原正美であった。
再開当初、情報が極端に不足したが、社員からの電話による情報や社にかけつけた社員のレポートなどでそれを補った。
地震情報が最初に放送されたのは、午前6時12分だった。
しかしこの時点では神戸の震度は発表されていなかった。
神戸の震度6(後に7に訂正)が放送されたのは、午前6時35分だった。
午前6時40分頃に1台、7時すぎ、さらにもう1台のラジオカーが出動し、被災状況のレポートを、須磨、垂水、長田、兵庫、元町、三ノ宮、東灘、芦屋、西宮などの被災地からレポートした。
特に長田の火災現場、三ノ宮交差点付近のビル倒壊現場、住吉川市営住宅倒壊現場、国道43号線深江付近での阪神高速高架橋の落下現場、国道171号線門戸陸橋落下現場などにいち早く入り、ナマレポートを送った。
社内の着信専用電話(078-733-0123)7台を使って震災ホットラインを開設し、午前8時から安否情報などリスナー情報の受付を始め、30分後には電話が殺到するようになった。
放送はこうした災害情報と安否情報などリスナー情報を軸に構成した。
震災特別放送としては、17日午前6時から20日午前3時まで連続69時間、コマーシャル及び、全てのレギュラー番組をカットして続けた。
(4)放送された情報の種類と入手径路
震災関連ニュース(地震、余震情報を含む) (共同通信 他)
災害地レポート (ラジオカー、社員レポート)
安否情報 (リスナー)
行政情報(被災者向け生活情報) (県・市対策本部)
被害まとめ (県警警備本部)
死亡者リスト (県警警備本部)
ライフライン情報 (共同、各社 県、市)
交通・道路情報 (共同、県警)
救援情報(生活) (リスナー)
学校・企業情報 (各組織・企業)
以上のような情報が放送されたが、前にも述べたように主軸はラジオカーからの災害地レポート、そして安否情報などリスナーからの情報だった。
特に18日早朝から安否情報とともに避難所での暮らしに必要な水や食料などを求める電話とそれに答える情報がホットラインに寄せられ、放送がまるで情報の広場のようになった。
この間に放送した安否情報、生活情報は約3万件
またラジオカーからのレポートは約50回。
(5)リスナー情報の種類
・安否情報肉親・知人の安否を知りたいとのメッセージ
『私は無事、○○さん安否を知らせて』との情報
・二次災害情報ガスもれ、火災などの情報
特にガスもれ情報は17日夕方から夜にかけて多かった。
・救助を求む情報
『食料がない』『水が足りない』などの情報から『人工透析の病院を知らせて』『お産のできる病院はないか』『隣りの家が倒れそうなので取り壊して欲しい』など。
・救援情報
基本的に救助を求める情報に対する回答情報
『風呂』『炊き出し』『住居』『ビニールシート』『洗髪サービス』等の提供情報
・生活相談罹災による行政手続き、法律相談、仮設住宅に関する問い合わせ、ガレキ処理などの相談
(6)行政からの情報提供、放送要請
69時間の特番中には具体的な情報提供はほとんどなく、災害対策本部での自社取材を行うしか方法はなかった。
それ以降は、兵庫県から災害時の協定に基づいて災害情報を毎日2回(1回3分)放送したいとの要請があり、1月21日(土)~3月末で実施した。
また2月17日の震災1ヶ月には正午の県民一斉黙とうの行事に告知などの面で協力を依頼され実施した。
神戸市からも災害本部情報の放送依頼があり、毎日1回(月~金5分)1月30日(月)~3月末まで実施した。
(7)他局との連携や作業分担
安否情報については、和歌山放送、KBS京都、西日本放送の3社からの要請で、1月20日から毎日3分枠を各局に提供し、各社のアナウンサーの読みとして放送した。
また緊急に依頼のあったニッポン放送、RFラジオ日本、文化放送には電話レポートを数回行った。
ニッポン放送が、自局でリスナーから集めたラジオの提供を受け、1,500台分をAM神戸が仲だちして市の災害対策本部へ渡した。
この際、ニッポン放送と同時放送した。
さらに、震災半年目にあたる7月17日(月)には、特別番組『地元マスコミは何を伝えたか、何を伝えられなかったか』を2時間40分にわたって放送した。 この番組は、地元のNHK神戸放送局、サンテレビ、KissFM、神戸新聞社の震災報道担当者を招いて、ナマ放送で、半年間の震災報道を検証した。