神戸大学数理データサイエンスセンターの木村建次郎教授らが創業した、株式会社Integral Geometry Science(本社:兵庫県神戸市、以下IGS社)は、新しい乳がん検査機「マイクロ波マンモグラフィ」の実用化に向けた協業が始まったことを明らかにした。
会見で検査機の説明をするIGS社の木村建次郎氏(写真:ラジオ関西)
株式会社IGS社は神戸大学の木村建次郎教授と木村憲明博士によって、2012年に設立した神戸大学発のスタートアップ企業で、このたび高精度かつ瞬時に3次元画像を記録する「マイクロ波マンモグラフィ」のプロトタイプ機を世界で初めて開発し、その実用化に取り組んでいる。
乳がん患者は年々増加しており、世界では年間約52万人、日本でも年間約1万4000人が乳がんで亡くなっている。
現在乳がんの発見については超音波エコーやX線マンモグラフィを用いた検査が主流となっているが、検査において被ばくや痛みが伴うことや、受診が任意となっていることなどを背景に、日本では約40%の受診率にとどまっている。
このたびIGS社が協業を開始した「マイクロ波マンモグラフィ」検査機は、そうした被ばくや痛みを伴わずに、高精度のデータを測定することができる画期的なもので、このマイクロ波での検査が全世界に普及すれば、乳がんで苦しむ多くの女性を救うことが期待される。
「マイクロ波マンモグラフィ」のプロトタイプ機(写真:ラジオ関西)
検査にはミクロンスケールの非常に薄いフィルムが用いられ、このフィルムを被検者の乳房に直接貼り、その上から検査機を当てていく。このフィルムは「乳房表面座標シール」といって、被検者の身体を保護すると同時に、乳房の表面を座標化する役割を担う。
これにより、より高精度な3次元データを測定することが可能となるだけでなく、検査データが座標として記録されるので、同じ位置での定点記録が可能となり、治療の経過を細かく観測することができる。
また、X線では白く写ってしまうコラーゲン組織も、マイクロ波であれば透明となるため、より鮮明な解析が可能となる。現段階では臨床研究のみだが、来年(2020年)以降は随時、治験が行われる予定で、早ければ2021年の晩秋にも医療現場で実際に活用されることとなる。
IGS社の木村建次郎氏は会見で「この検査機は、造影剤がいらないことや無痛、無被ばくなど、多くの利点をもっている。乳がん検査の受診率を上げ、乳がんの早期発見につなげていきたい」と展望を語った。
また、「乳房表面座標シール」の開発について協業合意した凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区)の前田幸夫取締役は「マイクロ波マンモグラフィの実用化は、これまでの乳がん検診のあり方を大きく変えるものと信じている。乳がんに苦しむ人がいない世の中をつくるために、我々も貢献していきたい」と期待を述べた。(山本洋帆)
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