フィンク体制で本来の輝きを取り戻しつつある小川慶治朗。次節こそ、今季初得点に期待がかかる(写真:ラジオ関西)
ヴィッセル神戸は、23日に行われた明治安田生命J1リーグ戦第16節で大分トリニータと対戦。トルステン・フィンク監督が指揮を執り始めて2試合目、試合に向けてしっかり準備できる試合としては初で、かつ、新指揮官のホーム初見参となった一戦だったが、結果は2-2のドロー。フィンク監督も試合後の会見で開口一番、「残念」と述べていたように、終盤までリードしていただけに、この勝点1は、決して満足できるものではないだろう。ラジオ関西『GOGO!ヴィッセル神戸』(月曜18:00-18:30)24日の放送回ではウイークリーマッチレポートで大分戦をピックアップした。
試合のポイントを振り返ると、前節のFC東京戦で今季初ゴールを決め、チームを勝利に導いたアンドレス・イニエスタは、第4子誕生のためスペインに一時帰国したこともあり、今節は欠場。ボランチには出場停止明けのセルジ・サンペールが入り、同じく前節の出場停止から復帰したダンクレーが宮大樹とセンターバックでコンビを組んだ。大分がGKを含めて後ろからボールをつなぐスタイルを標ぼうしていたこともあり、この試合では、開始から連動した激しいプレスを展開した神戸。それが功を奏して相手のミスを誘い、ダビド・ビジャ、ウエリントンのゴールで前半に2得点。ただし、守備では先制直後にミスが重なって失点すれば、終盤にはクリムゾンレッド育ちの大分MF小林成豪に恩返し弾を食らってしまい、第13節湘南ベルマーレ戦に続くホーム連勝とはならなかった。
それでも、この2試合ではフィンク監督のもとで戦い方が整理されつつある神戸。特に注目したいのは、左サイドで効果的なプレーを見せ続け、『GOGO!ヴィッセル神戸』番組内でも大分戦直後のコメントを届けた、小川慶治朗だ。昨シーズン途中から湘南に期限付き移籍。外での経験を積みチームに復帰した今季だったが、開幕から控えに甘んじ、先発出場した試合でも途中交代を強いられるなど、チーム同様、苦しい戦いを強いられていた。それが、この2試合は先発フル出場で、ともに11km以上を走り、スプリントも36回(FC東京戦)、34回(大分戦)と持ち前の推進力をコンスタントに発揮。攻守に献身的なプレーを披露するなど、ヴィッセルサポーターに絶大な人気を誇る慶治朗本来の姿が、ようやくここに来て見られるようになった。
大分戦でも、ビジャの先制点のシーンでは、そのきっかけとなるプレスを実行。「相手が後ろでつなぐというのがあったので、前から行って、センターバックの右のところ、あそこを『はめる』のが僕の役割だったので、かわされてもいいという気持ちでいったら、うまく足にボールが当たって、中にいい感じでいってくれた。それがゴールにつながって、狙い通りの得点になりました」(小川)
さらに、フィンク・ヴィッセルでキーポイントの1つになっているのが、小川と初瀬亮が担う左サイド。この2人のハードワークが不可欠なものとなっている。「もう少し初瀬と崩せる部分があるのかなと、この試合でも感じたので。そこがうまく出せるときもありますが、まだ出せないときもあった。でも、(2人のコンビとして)やり始めて間もないし、そのなかで2人で声を出しながらやれているので、いい方向に向くというか、いいコンビが作れると思います」
ただ、やはりチーム、サポーターが期待するのは、小川のゴール。J1リーグ戦では2017年シーズンのJ1第29節浦和レッズ戦で記録したのが最後。クリムゾンレッドのエースナンバーである13番を背負う男は、今、得点に飢えている。「期待されているのはわかりますし、僕自身も自分のゴールがすごくほしい。期待に応えたいというところで、もどかしい思いですが、やはり練習しないと入らないもの。焦らず、毎日の練習でゴールのイメージを作って、次節まで期間は短いが、しっかり準備してゴールを決めたい」
しかも、大分戦では、中学時代から一緒にプレーしていた小林成豪のゴールをピッチ上で見せつけられたうえ、ユニフォーム交換のとき、「まだケイジロウくん(今季の得点は)ゼロでしょ。あかんやん、なんで試合に出てるの!」と、強気な後輩から発破をかけられた。クリムゾンレッド生え抜きのリードオフマンが、ここで燃えないわけにはいかないだろう。次節、名古屋グランパス戦は、出場すれば、J1・J2通算200試合目となる節目の試合。サポーターからもヒーロー候補のひとりとして大きな期待をかけられている小川が、大観衆集うノエビアスタジアム神戸のピッチを存分に駆け回り、得点を決めて雄叫びをあげる姿を、誰もが待ち望んでいる。