『八甲田山』や『剣岳 点の記』の原作で知られる文豪、新田次郎が実話をもとに描いた小説を映画化した、『ある町の高い煙突』。その作品で主演を務めた井手麻渡(いで・あさと)が、24日、ラジオ関西『時間です!林編集長』にゲストとして登場し、初主演となった映画の製作エピソードなどを語った。
映画『ある町の高い煙突』で主演を担った井手麻渡(写真:ラジオ関西)
物語のテーマは、「100年前、明治の終わりに、命をかけて環境破壊と闘い、愛と誇りを守った人たちがいた――」(『ある町の高い煙突』公式ホームページより)。井手演じる主人公の関根三郎は、若くして煙害対策の責任者となり、企業側と交渉にあたるという役。相反する立場だった企業側の代表、加屋淳平(渡辺大)とともに、煙害対策として高い煙突の建立という打開策を見出していく。みんなの意見をまとめて、粘り強くつとめて冷静にふるまうという役どころについて、「本当はきっと三郎も自分の村が公害問題によって荒廃していくことによって、憤っていたり、そういった気持ちはきっと強かったと思いますが、それをどう抑えて、冷静にみんなの話をまとめていくかというのは、お芝居をしていてもカロリーを使うシーンだったなと記憶しています」と井手。役を通しても、三郎の担う役割の大変さを実感していたようだ。
「(現代でも)お互い譲れないものって必ずあると思うのですが、譲らないでいると、必ずけんかになってしまう。今回(映画で)は企業と住民と、それに公害問題が絡んできて、とても規模が大きな話になってしまっているのですが、実はそれは職場であったり、家庭であったり、本当に小さな、人が集まるところには必ずあるところだと思うので。これを見て、一緒に見た方と、この人のことをちょっと思いやりたいと思っていただける映画になっていればいいなと思います」と井手も述べるように、映画には現代に通じるものも多く込められている。
仲代達矢率いる演劇集団「無名塾」に、2009年に入塾し、舞台を中心に活躍している井手。「(映画では)これだけのセリフがある、名前のある役は、ほとんど初めてなので。本当に、わからないことだらけで、渡辺大さんや伊嵜充則さんだったり、数々のベテランの先輩たちが助けてくださり、なんとか撮影を終えることができました。本当に(作品にかかわった)皆さんとお会いできて、学べることばかりでした」と、『ある町の高い煙突』主演に際しては、師匠ともいえる存在の仲代をはじめ、吉川晃司、大和田伸也、渡辺裕之、六平直政、小林綾子など、数多くの個性派俳優の存在が大きな力になったようだ。
ちなみに、「私の両親が神戸の出身で、神戸の高校の演劇部の先輩と後輩(という間柄)。そのご縁もあって、23日に神戸ハーバーランドの映画館(OSシネマズ神戸ハーバーランド)で舞台挨拶を行い、今回、神戸でラジオに出させてもらえて大変光栄に思います」と、神戸への縁を語った井手。主演作となる映画『ある町の高い煙突』はOSシネマズ神戸ハーバーランド、イオンシネマ加古川、あべのアポロシネマなど全国で上映中だ。
両親が神戸出身ということもあり、神戸でのラジオ出演に感慨深い思いを述べていた、映画『ある町の高い煙突』主演の井手麻渡(写真左)(写真:ラジオ関西)
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