「西條遊児のひょうご町歩き㉜」11月20日(月)放送
11月14日(火)、雨が降ったり止んだりする中を香美町へ行ってきました。
今回は11月26日にオープンする余部鉄橋の「空の駅」へ通じるエレベーター(クリスタルタワー)の事前取材と、余部周辺を歩いてみようというものです。
豊岡から香住へ向かう178号を走っていると、真っ白い灯台の形をした高さ11メートルのシンボル塔が見えてきます。
カニシーズン迎えて香住観光協会が先日お化粧直しを2年振りにしたので、「あと一息」の文字がはっきりと見えました。
ラジオ関西を出発して3時間で余部鉄橋の下にある「道の駅あまるべ」に到着。
「道の駅あまるべ」は5年前にオープンした県内で一番小さい道の駅で、地域の人たちが1軒につき1万円ずつ出資し、240万円で作った「あまるべ振興会」の施設で、従業員も地域の人しか使わないという全国でも珍しいものです。
赤瓦の木造平屋建てでいかにも浜小屋という感じで、農産物や但馬土産、レストランなどがあるのは定番ですが、道の駅限定の余部鉄橋の鋼材グッズや鉄橋ができるまでのことがわかるビデオ上映のコーナーもあり、いかにも地域性を生かした施設だと感じました。
お目当てのエレベーターは道の駅の駐車場の近くにあり、高さ47メートルの4面ガラス張り、15人乗りで45秒で空の駅に着きます。
残念ながらこの日は国交省の最終検査の日で試乗はできず、歩いて空の駅まで上がったのですが、10数分かかりました。しんどかったですが、それだけに値打ちがあり上からの眺めはご機嫌です。
案内していただいた「道の駅あまるべ」駅長の馬場幸男さん(写真右)は試運転の説明会でエレベーターに乗ったそうですが「上がっていくときは景色がバーッと広がって感動したのですが、降りるときは4面が全部見えるので血の気が引いていくような感じでした(笑)」ということで、やっぱり迫力があるんでしょうね。
夜には12台のLED投光器で青やオレンジなど7色にライトアップされますので下から見るのも楽しみです。
余部鉄橋といいますと33年前の12月に回送列車の転落事故があり、下の加工場を直撃して6名の方が亡くなるという惨事があったのですが、その方々の霊を慰める観音像が駐車場そばに立っていました。
合掌。
余部という地域はロマンを感じさせる所です。
ここから先は、あまるべ振興会会長の山本和夫さんに案内していただきました。
御崎の先端には、全国に21しかない『恋する灯台』に選定されている「余部埼(あまるべさき)灯台」があります。
この灯台は高さが14メートルしかありませんが、海面から光源までの高さが284メートルあり、日本一の高さだそうです。
山本さんは「今日はお天気がもうひとつですが、晴れた日の景色は壮大で『地球は丸かった』というのが実感できますし、夜の漁火がきれいです。これからの余部は灯台の光と漁火とクリスタルタワーの照明という、3つの光をテーマにして何かできないかと考えています」とおっしゃっていました。
近くの山あいには壇ノ浦の戦いに破れた平清盛の異母兄弟の弟、平通盛ら7人が隠れ住んでいたそうです。
急な坂道を上がったところに通盛と家来の伊賀平内左衛門を祀っている「平内(へいない)神社」があり、樹齢何百年という大きなイチョウの木の側に小さい祠がありました。
毎年1月28日に武将に扮した3人の若者が、源氏に見立てた的をめがけて101本の矢を射る「百手(ももて)の儀式」という行事があります。
以前は眼科医の看板みたな目を描いて、その目玉を射て平家の再興を祈ったそうですが、さすがに残酷だということで丸い的になりました。祠の中にはその時に使う弓が保管されています。
近くに余部小学校の御崎分校がありますが、一見すると運動場があるぐらいで、大きさは近所のお家とあまり変わりません。
最近は少子化や交通網の発達で分校もどんどん減っていき、兵庫県内で唯一の小学校の分校になりました。
4年生からは本校に行きますが、今も生徒と先生がひざを突き合わせて授業をし、地域の人も学校行事に積極的に参加してくれているようです。
地域みんなで子どもを見守るという、小さい学校ならではの良さを感じます。
帰りに香住にある「ジオパークと海の文化館」へ寄りました。
ここは元もと「海の文化館」という施設でしたが、但馬海岸のジオパーク認定を機会にリニューアルをし、1階にジオパーク関係の展示をし、2階に海の文化の展示をしています、と館長の藤原敦さんが案内をしてくれました。
「2階の展示室には北前船の歴史や漁の変遷が分かる展示をしているほか、こちらの部屋には500種類の魚のはく製を展示しています。今はカニのシーズンですので真ん中のコーナーに48種類のカニを中心に並べました」。
なるほどズワイガニやベニズワイガニは勿論、毛ガニ、タラバガニ、タカアシガニなどが美味しそうに並んでいます。
「ここの目玉は正面に展示しているリュウグウノツカイの3メートルのはく製です。リュウグウノツカイは5年か10年に一度ぐらいしか見つからず、よく話題になるダイオウイカよりも珍しいんですよ」
最近は精巧なミニチュアが色々ありますが、本物の魚のはく製がこれだけ並んでいるのはなかなかの壮観です。
このジオパークと海の文化館もなかなか見ごたえのある施設でした。しかも無料というのが嬉しいですね。
ということで、折角カニのシーズンなのに今回は見るだけで食べられなかったのは残念でしたが、それと同じぐらいの物を見ることができました。
11月26日は浜坂道路が開通して、クリスタルタワーもオープンし、余部埼灯台もこの日は無料で開放されます。
クリスタルタワー登場で観光客が増えると思われますが、1泊2日の予定で、初日はカニすきを食べて、翌日は余部へ足を延ばすというのは如何でしょう。