おたかのシネマでトーク
今日は「ジョーカー」をご紹介しました。
監督 トッド・フィリップス
出演 ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ、フランセス・コンロイ
この映画、賛否両論というか・・・。
DCコミックファンにとっては、ジョーカーはバットマンシリーズの最強のヴィラン(悪役)。
そのジョーカーがどんなふうに誕生したかを描くこの映画、貧しい道化師アーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)が、あのスーパーヴィラン“ジョーカー”になるとは思えない、スケールが違う、やわすぎる・・・と、どうも納得できないというDCコミックファンの一派。
一方、哀しい切ない生い立ちと不幸な巡りあわせから、思ってもいない方向に展開していく人生。
誰とでもいいから人と心を通わせたいと願いながら、決して理解されることなく、虚実の間をさまよう一人の孤独な男アーサー・フレックが、笑い、狂気、恐怖と向き合いつつ、ヴィランになってゆく生きざまを描いたところに共感し、支持する人も多い。
ジョーカーの歴史をひも解くと、1940年の4話の短編を集めたコミックの中の2話に登場したのが最初らしい。
1966年から始まったTVの「バットマン」にも登場し、1966年には映画デビュー。でもそれはその他大勢の悪役連合の一人というような位置づけだった。
映画で注目を集めたのは、1989年のティム・バートン監督の「バットマン」で、ジャック・ニコルソンが演じてから。
2008年のクリストファー・ノーラン監督の「ダーク・ナイト」では、ヒース・レジャーがジョーカーを演じ、鮮烈な印象を残した。
今回の監督は、トッド・フィリップス。あの2009年から13年にかけての「ハング・オーバー」シリーズでおなじみの監督で、その後、このシリーズで主演したブラッドリー・クーパーと製作会社を立ち上げ、クーパーが監督・主演の「アリー/スター誕生」では製作に名を連ね、今作ではクーパーが製作を担当している。
アメリカン・ニューシネマの頃の人物描写中心の映画、マーティン・スコセッシ監督の「タクシー・ドライバー」や「キング・オブ・コメディ」、シドニー・ルメット監督の「セルピコ」や、ミロス・フォアマン監督の「カッコーの巣の上で」などに影響を受け、人物中心の作品を作りたかったというトッド・フィリップス監督。
ある意味コミックスは我々にとってのシェイクスピアだから「ハムレット」や「マクベス」にいろんなタイプの作品が作られてきているのと同じように、これまで作られてきたものとは違う“ジョーカー映画”があってもいいんじゃないかという思いでこの映画を作ったという監督と、“ジョーカーの大きな魅力は、彼を定義づけるのがすごく難しいところ”というホアキン・フェニックスの素晴らしい演技で、本当に見どころの多い作品に仕上がっている。
「キング・オブ・コメディ」では名司会者に憧れ誘拐するというコメディアン志望の男を演じたロバート・デ・ニーロが、アーサーと母親がいつも見ているTVの“マレー・フランクリン・ショー“の有名司会者フランクリン役で出演しているのも話題の一つ。
全世界で、経済的不公平を感じている人たちは沢山いる。共感や思いやりや気遣いが欠如している世界について考えてほしいという、現代につながる政治的なメッセージも含んだこの作品、今年の第76回ヴェネツィア国際映画祭で、最優秀作品賞にあたる金獅子賞を受賞している。
★おたか★
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